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2026.11.08

「Facebookやってますか?」と20代に聞かれた。SNSの「若者離れ」で見落とされる、名刺という役割

「Facebookやってますか?」と20代に聞かれた。SNSの「若者離れ」で見落とされる、名刺という役割

先日、AI活用をテーマにしたイベントで、学生ベンチャーの起業家や20代の若いビジネスパーソンと話す機会があった。帰り際、連絡先を交換しようとしたら、何人かから同じ質問が返ってきた。「Facebookやってますか?」

意外だった。LINEでもInstagramでもなく、Facebook。おじさん御用達のSNSだと思っていたから、「使ってるの?若いユーザーなんていないと思ってた」と聞き返した。返ってきたのは「普通に使ってますよ」のひと言だった。

この「あれ?」が今回の出発点になる。先に結論を言うと、20代の一部にとってのFacebookはSNSではなく、ビジネスの名刺だ。そしてこれはSNS論で終わる話ではなく、ブランドの接点をどこに置くかという、僕たちの仕事そのものの話だと思っている。

「若者はFacebookを使わない」は、半分しか合っていない

総務省情報通信政策研究所の「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2026年6月公表、2025年12月に13〜79歳1,800人を対象に実施)によると、Facebookの利用率は10代が14.3%、20代が23.4%、30代が37.4%、40代が38.9%、50代が33.1%、60代が22.6%だった。若者が少ないという印象は、数字でも裏付けられる。20代の利用率は60代とほぼ同じ水準で、同じ20代のInstagram利用率82.6%とは比べものにならない。

だから「若者のFacebook離れ」は事実だ。ただ、あの日僕が会ったのは、その23.4%の側にいる人たちだった。4〜5人に1人。少数派だけど、ゼロではない。しかもこの2割強は、ランダムに散らばっているわけではないと思う。起業を目指す学生、スタートアップで働く若手、年上の社会人と一緒に活動する人たち。つまり「年上のビジネスパーソンと接点を持ちたい人」に偏っているはずだ。これは公的調査の数字ではなく僕の見立てだけど、あの日の顔ぶれにはぴったり合う。

全体の平均だけを見て「使われていない」と判断すると、いちばん大事な「誰が、何のために使っているのか」が消えてしまう。平均値は、ブランドの接点を考えるときに、いちばん役に立たない情報になることがある。

彼らが使っているのは「SNS」ではなく「名刺」だ

彼らが使っているのは「SNS」ではなく「名刺」だ

ここで、僕なりの定義を置いておきたい。名刺とは、初対面の相手が「この人は信用できるか」を最短で確かめるための道具である。紙かデジタルかは関係ない。

Facebookは実名で、顔写真があって、勤務先や大学が出て、共通の友人が見える。年上の社会人に初めて連絡する場面で、「怪しい者ではありません」を一瞬で示せる。この機能は、LINEにもInstagramにもない。

距離感の問題もあると思う。目上の相手にLINEの交換をお願いするのは、心理的なハードルが高い。でも「Facebookで繋がらせてください」なら、失礼にならない。逆に彼らにとっても、LINEやInstagramは友人や家族と過ごすプライベートな場所で、そこに仕事の相手を入れたくない。だから仕事用の窓口を、あえて別のサービスに切り分ける。使い分けているのはSNSの種類というより、関係の距離なのだと思う。

ビジネス向けならLinkedInがあるじゃないか、という声もあるだろう。世界的にはそちらが本命だ。ただ、僕の周りの経営者を見渡すと、LinkedInをがっつり使っている人は少数派で、Facebookはアカウントを持っていて、DMなら届く、という人のほうが多い。あくまで僕の周囲の話で、日本全体の実態は分からない。それでも「最初の連絡が届く場所」としては、Facebookが機能する場面がまだあるのだと思う。相手がいる場所に行く。それだけの合理性だ。

20年前の僕たちも、同じことをしていた

Facebookが日本に上陸したころ、多くの人が実名で登録した。著名人も含めて、だ。おかげで、普通なら直接つながるのが難しい方とも、フレンドになれる時代があった。当時の僕たちは20代半ばから30代前半で、年齢は今の彼らとほぼ同じだ。

そのときのアカウントは、20年近く経った今もそのまま残っている。つまり僕たち世代のアカウントが、彼らにとっては「会いたい人に会うための入口」になっている。若者がFacebookを選んだというより、僕たちが20年かけて作ってしまった名刺入れに、彼らが後から入ってきたと言ったほうが近いかもしれない。感慨深い。

ブランドの接点は「自分が使いたい場所」ではなく「相手の標準」で決まる

ブランドの接点は「自分が使いたい場所」ではなく「相手の標準」で決まる

ここからは仕事の話。この記事を読んでいるBtoBの担当者や経営者に、持ち帰ってほしい視点がある。

接点設計の失敗は、たいてい「自社が発信したい場所」から決めたときに起きる。流行っているから、競合がやっているから、社内に詳しい人がいるから。でも、届けたい相手が仕事の入口として使っている場所は、そのどれとも関係なく決まっている。次の世代の決裁者候補、新卒、将来のパートナー。彼らがどんな作法で人と会っているかを知らないまま、チャネルだけ増やしても、ブランドは見つけてもらえない。

接点設計とは、自社の都合ではなく、相手が信頼を確かめる作法に合わせる設計である。ライオンハートではブランドを「特定の誰かにとって、特別な存在」と定義しているけれど、その「特定の誰か」の標準的な作法を知ることが、すべてのスタートになる。

これは、僕自身が海外で体験したことでもある。フィリピンで暮らしていたとき、現地の空手やムエタイ、柔術の道場に通っていた。「現地で格闘技をやっている日本人」は珍しいらしく、面識のない駐在員や現地の経営者のあいだで、いつのまにか僕のことを知っている人もいた。(海外日本人コミュニティはそもそも狭いのだけども)展示会でも名刺交換会でもなく、僕の奇妙な!?趣味が名刺代わりになったわけだ。その場所のルールに合わせて入っていくだけで、認知は思った以上に広がる。

まとめ:平均値の向こうにいる「会いたい人」を見る

「若者はFacebookを使わない」という平均値の話は、数字としては正しい。でも、自分たちが会いたい相手がどこで、何のために、どんな名刺を持っているのかは、平均値からは見えてこない。僕はそれを「Facebookやってますか?」という一言で教わった。あなたの会社が会いたい相手は、いま、どんな名刺を持っているだろうか。そこから一緒に考えてみたいという方がいたら、気軽に声をかけてほしい。

FAQ

Q. 20代の2割強しか使っていないなら、BtoBでFacebookは不要ですか?

A. 全員に届ける場所としては弱いです。ただ、届けたい相手が若手起業家や就活層、次世代の担当者なら話は別になります。まず相手がどこで人と会っているかを確かめてから、使う場所を決めたいところです。ただ、広告出稿のメディアとしては、特定の層に対して非常に有効だと思います

Q. 自社のブランド接点は、何から見直せばいいですか?

A. 新卒や取引先の若手に、「最初に連絡を取るとき、何を使いますか?」と聞いてみてください。それだけで、自社が思い込んでいた接点とのズレが見えてきます。もう、ずいぶん前の話ですが、使っているSNSについてインターン生に聞いたことがあった。彼女は複数のアカウントを作って、ファッションを見るアカウントはこれ、のように目的に応じて使い分けていた。なるほど、と感心した。

Reference/quote source
総務省「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の公表
令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)

Atsushi Ichikawa

WRITTEN BY