新しく何かをはじめるときに大切なのは「目的」と「コンセプト」
新規ビジネスをはじめるなどの新しい試みについて相談されることも少なくありません。
その場合、お客様の社内で選抜されたプロジェクトメンバーと一緒にお仕事をすることになります。
プロジェクトメンバーは部署をまたいでの参加のケースも多く、お客様の企業規模によってはメンバー同士も日常話をする機会がほとんどないということもあります。
部外者の私たちライオンハートを含めて、こうしたメンバーが目的を共有して、プロジェクトを成功に導いてくためには、コミュニケーションが重要になってきます。
コミュニケーションと一口に言っても様々ありますが、プロジェクトを進める際に最も重要なのは2つです。
それは、「目的」と「コンセプト」です。
目的
文字通り何のためのプロジェクトなのか?ということです。
プロジェクトのメンバーは、自社の経営計画の戦略・戦術の中に組み込まれた「プロジェクト」を担当しているわけです。
まずはそのことを理解し、自社の中での「プロジェクト」の役割、位置づけを理解し、目的を言語化することが重要です。
様々な部署から参画しているプロジェクトメンバーがその目的を理解し、それぞれの力を発揮してもらうためにも目的の言語化と共有は欠かせません。
また、これは社外に発表するわけではありませんから、プロジェクトのメンバーが誤解なく理解できる表現でかまいません。
コンセプト
コンセプトってなんだろう?
定義は様々あるかと思いますが、ここではプロジェクトで扱う内容を端的に分かりやすく表現したものと考えます。
例えば、あるお客様からの相談で、「BtoBで提供していたサービスリソースを使い、BtoC市場へ参入したい」というものがありました。
つまり、BtoC向けのサービスを新たに創るということです。
プロジェクトのメンバーもBtoCビジネスは未経験、一体どうやって進めていけばいいのか分らない?という状態。
そこでプロジェクトのメンバーと話し合い、新しく創るサービスの「コンセプト」を定めることにしました。
それぞれのメンバーの中におぼろげにあるサービスについて、分かりやすく言語化して共有しようと試みたわけです。
ちなみに、我々は、コンセプトを「際立つ特徴」と定義しています。
メンバーの皆さんと言語化していく中で、きっと「際立つ特徴」が見つかるだろう、そう思いました。
コンセプトの作り方(キーワードの抽出方法)
競合比較の視点からキーワードを抽出
既に先行するサービスがあったので、競合となり得るサービスをいくつか調べました。
例えば、検索すればいくつかWebサイトが出てきました。
そのWebサイトの情報から得た印象をポストイットなどに書き留めてメンバーとシェアします。
そのとき、ライオンハートがメンバーの皆さんにした質問はこうです。
競合他社のWebサイトを見てパッと浮かんだ印象や言葉は?
ポストイットをポジティブな内容とネガティブな内容に分けていきます。
これは直感で構いません。
あまり深く考えずにサクサク進めましょう。
見込み客の視点からキーワードを抽出
次に見込み客の立場に立って考えていきます。
そのとき、ライオンハートからはこんな質問をしました。
見込み客にとって、理想的な◯◯屋さんと聞いて、パッと浮かんだ印象や言葉は?
※◯◯屋さんには皆さんの業界やサービスを当てはめてみてください。
ちなみに、見込み客を考える場合、ペルソナなどを設定してメンバーとシェアするのも有効です。
とにかく頭の中にある考えやイメージを具体的にして、共有することが重要です。
さて、こちらも同じようにポストイットなどに書き留めてましょう。
それから、先程ポジティブ/ネガティブに分けた「競合比較の視点」のポストイットに関連するものがあるか確認していきます。
もしあれば、そのポストイットの上に「見込み客の視点」のポストイットを貼り付けます。
つまり、先行してサービスを提供している企業が、見込み客の要望をどれだけ満たしているかがわかるわけです。
コンセプトの作り方(キーワードの整理方法)
ポストイットを整理してくと下記のように分類されると思います。
- 「競合比較の視点」でポジティブに分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついているもの
- 「競合比較の視点」でポジティブに分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついていないもの
- 「競合比較の視点」でネガティブの分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついているもの
- 「競合比較の視点」でネガティブの分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついていないもの
1.「競合比較の視点」でポジティブに分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついているもの
業界としてどうやら当たり前の基準だったり、それを外しては成立しない可能性があるものと考えられます。
このポストイットに欠かれたキーワードはコンセプトでも外せません。
表現はともかく、見込み客には「ここは満たしてくれる」と印象付ける必要がある部分と言えます。
2.「競合比較の視点」でポジティブに分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついていないもの
このキーワードについては、もしかすると、必ずしも見込み客から求められていることではないかもしれません。
しかし、サービスの特徴になりえるものなので、戦略的に使っていくとサービスにも個性を出すことができます。
ただ、見込み客が重視していない可能性もあるため、そこに注力しすぎてもイマイチ成果につながらない・・・ということは起こりえます。
3.「競合比較の視点」でネガティブの分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついているもの
「見込み客にとって、理想的な◯◯屋さんと聞いて、パッと浮かんだ印象や言葉は?」という質問で浮かんだキーワードなので、この分類はほとんどないと思います。
逆に「理想的ではない◯◯屋さんと聞いて、パッと浮かんだ印象や言葉は?」という質問をしたときに出たポストイットがついていたとしたら、それは競合サービスにとっては大問題ですね。
意図せずネガティブな印象「理想的ではない◯◯屋さん」を出してしまっている可能性が高いからです。
4.「競合比較の視点」でネガティブの分類されていて、「見込み客の視点」のポストイットがついていないもの
見込み客視点から見ると必ずしもネガティブではない可能性もあります。
「競合比較の視点」では、裏側を知る同業者ならではの意見が出るため、見込み客にとって重要ではない点も抽出されてきます。
そのため、ネガティブに分類されるものの、実際に見込み客からするとそれほどネガティブには感じない、重要ではないものは少なくありません。
コンセプトの作り方(仕上げ)
前述で整理してきたポストイットを眺めて見ましょう。
ポジティブに分類されたものは、(競合から)見習うべき点、真似るべきものと言えます。
とりわけ、見込み客視点のポストイットが付いている点は外せません。
逆にネガティブに分類されたものは、避けなければならないものです。
「見込み客視点」で抽出したキーワードの内、「競合比較の視点」に貼り付けなかったポストイットがあるはずです。
これらは、競合のサービスが満たせていない、気づけていない見込み客のニーズと言えます。
つまり、これから新しくはじめるサービスの特徴や強みになり得るものです。
こうして抽出、分類したキーワードを改めて整理して、言語化することでコンセプトが出来上がります。
このワークをプロジェクトのメンバーと行うことで、プロジェクトメンバーの視点を合わせることができるので、後の進行が驚くほどスムーズになります。
コンセプトを考えるのは難しいですが、先行する競合のサービスや見込み客の視点を手がかりにすることで、一定の客観性を保ちつつコンセプトを言語化することができます。
言語化のポイントですが、小中学生でも理解できるような平易な表現をおすすめします。
理由は、直感的にも理解しやすく、記憶に残ります。
そして、勝手な解釈が入る余地が少ない分、ブレがなくなり、プロジェクトがスムーズに進行します。