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2026.08.23

60% of logo redesigns fail!? What business owners should change before designers do.

ロゴリニューアルの6割は失敗する!?経営者がデザイナーより先に変えるべきこと

「ロゴを新しくして、うちの会社のイメージを変えたい」。経営者の方からロゴのご相談をいただくとき、こうした言葉をよく聞く。世の中には「シンボルマークとロゴタイプの違い」のような、ロゴ制作の基礎知識を丁寧に解説してくれる記事がたくさんある。それはそれで大切な知識だ。でも僕がいつも引っかかるのは、経営者が本当に向き合うべき問いは、そこじゃないということだ。今日は、ロゴリニューアルという意思決定において、デザインの話をする前に経営者自身が変えなければいけないことについて、僕なりの持論を書いてみようと思う。

そもそも「ロゴとは何か」を調べると、シンボルマーク(図形だけで表現するマーク)とロゴタイプ(文字だけで表現するもの)、そしてその両方を組み合わせたロゴマークという分類にたどり着く。この分類自体はとても大事な知識で、ロゴを作る前に知っておいて損はない。ただ、こうした基礎知識をいくら理解しても、「なぜ自社はロゴを変えるのか」という経営の問いには一切答えてくれない。分類の知識と、経営判断はまったく別のレイヤーにあるということを、まず整理しておきたい。

そもそも、ロゴを変えてもブランドは変わらない

僕たちは「ブランド」を、特定の誰かにとって特別な存在であること、と定義している。ブランディングとは、その特別さを意図的に築き続けるプロセスだ。だとすると、ロゴは何なのか。答えはシンプルで、ロゴはブランドという印象を伝えるための、数ある接点のひとつに過ぎない。理念、言葉、Webサイト、店舗の空間、社員の振る舞い。ブランドはそのすべての積み重ねで作られていて、ロゴだけを差し替えても、積み重なってきた印象がひっくり返るわけではない。

それなのに「ロゴを変える=ブランドを変える」だと錯覚してしまう経営者は、少なくない。気持ちはわかる。ロゴは一番目に見えるし、一番わかりやすく「変わった感」を出せる。でもそれは、家の外壁だけ塗り替えて「リフォーム完了」と言っているようなものだと僕は思っている。

小さなロゴアイコンが大きな土台構造の上に乗る氷山構造のコンセプトイラスト

ロゴ刷新の6割は、思ったような成果を出せていない!?

これは僕の感覚の話だけではない。ブランディング領域で200件以上のリブランド事例を分析した海外の経営アドバイザー、Sunny Bonnell氏が2026年に発信した調査では、リブランドの最大60%が想定通りの成果を出せていないと指摘されている。その主な原因は、戦略よりも見た目の刷新を優先してしまうことにあるという。つまり、多くの会社が「変える理由」を言語化しないまま、「変えた後の見た目」から考え始めてしまっているということだ。

これは海外の話に限らない。日本でも、ロゴやCIの刷新は「時代への適応」「リブランディング」「社名変更・統合」という経営判断とセットで語られるべきものだと言われている。裏を返せば、経営判断としての整理を飛ばしてデザインだけを新しくしても、うまくいかないケースが後を絶たないということでもある。

経営者が一番やりがちな間違い――「好きか嫌いか」で判断すること

ここからが、僕が一番伝えたいこと。ロゴやデザインの提案を見た経営者の中には、「なんかこれ、あんまり好きじゃないんだよね」という反応を返す方もいらっしゃる。これ、実はちょっと危険な反応だと僕は思っている。

例えば40代の経営者が「このデザイン、好きじゃない」と言ったとする。でも、そのロゴやサイトが向き合う相手が新卒の学生だったとしたら、その経営者個人の好き嫌いは、正直まったく参考にならない。自分がターゲットでないなら、自分の感情はそのプロジェクトにとって関係がない。厳しい言い方かもしれないけど、経営者の「好み」でロゴの採否を決めている会社は、いまだにかなり多いんじゃないかと思う。

好き嫌いという感情は、一番わかりやすくて、一番強く出てしまう判断軸だ。でも、その感情は「誰にとって特別な存在になりたいのか」というブランドの目的とは、まったく別のところにある。極端な言い方をすれば、社長の私物ではないロゴを、社長の私物のような感覚で選んでしまっている会社が、あまりに多いということだ。

もちろん、僕自身にも好みはある。デザインを見て、心が動くこともある。でも、その心の動きをそのままプロジェクトの意思決定に持ち込んでいいかどうかは、まったく別の話だ。自分の感情と、会社としての意思決定を、意識的に切り分けられるかどうか。それが経営者としての成熟度を測る、地味だけど確かなものさしのひとつだと僕は思っている。

この一方で、中小企業の場合、経営者の気持ちも無視できない。彼らがビジョンにコミットできたとき、驚くほどの爆発的な力を発揮することを僕は知っているから。プロジェクトの目的、ロゴの役割によっては、あえて対象者に「経営者」を加えることも少なくない。目下、まさにそうしたプロジェクトに関わっているので、プロジェクトが一段落したらCase Studyでご紹介させていただきたい。

「同じ眼鏡をかける」という評価のものさし

僕らが社内でよく使う言葉に「同じ眼鏡をかける」というものがある。お客様が本来持っている評価指標を一緒に具体化して、経営者もデザイナーも同じ視点でアウトプットを評価していく、という考え方だ。

やり方はシンプルで、まず「理想の状態」「今の現在地」「その間にあるギャップ」を丁寧にヒアリングして言語化する。そのうえで、目的と要件を満たしているかどうかだけで、ロゴやデザインを評価する。好き嫌いの感情は、そこにあえて入れない。これは冷たいということではなく、むしろ逆だ。感情で判断してしまうと、本当に届けたい相手に届くデザインを、自分の好みで潰してしまうリスクがある。それはブランドにとって不誠実なことだと、僕は思っている。

この「眼鏡」を経営者・担当者・デザイナーの間でしっかり共有できているかどうかが、ロゴ刷新がうまくいくかどうかの分かれ目になる。デザインの技術以前に、評価の物差しを揃えること。それが、僕らがロゴやブランドのプロジェクトで一番最初にやることだ。

ロゴリニューアルに動くべきタイミングと、費用感の考え方

では実際、ロゴリニューアルはどんなタイミングで検討すればいいのか。僕の経験上、社名変更やM&A、事業内容と社名・見た目にズレが生まれたとき、採用力を強化したいときなど、「経営の意思決定」が先にあるタイミングでロゴの話が出てくるのが健全だ。逆に「なんとなく古く感じるから」だけで動き出すと、さきほどの60%の失敗側に回りやすい。

費用についても、ロゴ単体の制作費だけを見て高い・安いを判断するのはあまり意味がない。ロゴは単体のデザイン作業ではなく、理念の言語化からヒアリング、評価基準のすり合わせまで含めたプロセスの結果物だからだ。プロセスにどれだけ時間をかけたかで、金額も、そして成果も大きく変わってくる。安く早く仕上げたロゴが、結局使われなくなって数年でまた刷新することになった、という話を僕はいくつも見てきた。

もうひとつ付け加えると、2026年現在、ロゴが最も目に触れるのはスマートフォンのアプリアイコンやSNSのプロフィール、ファビコンといったデジタルの接点だと言われている。名刺や看板よりも先に、小さな画面の中でどう見えるかを基準に設計する必要がある時代になっている。この視点が抜け落ちたまま「かっこいいから」で決めたロゴが、実際の運用で読みにくい・小さくすると潰れる、という失敗も少なくない。

まとめ:ロゴを変える前に、まず眼鏡を変える

ロゴリニューアルは、デザインの話である前に、経営の意思決定の話だ。そして経営者がまずやるべきことは、新しいロゴ案を探すことではなく、自分の「好き嫌い」という眼鏡を一度外して、「誰にとって特別な存在でありたいか」という眼鏡に掛け替えることだと思う。その眼鏡さえ揃えば、ロゴだけでなくブランドに関わるあらゆる判断が、驚くほどぶれなくなる。

正直、自分の会社の眼鏡が今どんな度数になっているか、自分たちだけで正確に把握するのは難しい。長く同じ会社にいればいるほど、自分たちの当たり前が、外から見た当たり前とずれていく。もし今のロゴやブランドに、なんとなくの違和感があるなら、それは眼鏡がずれ始めているサインかもしれない。そう感じたときは、一度外の人間と一緒に、その眼鏡を覗き直してみるといいと思う。

Reference/quote source
Sunny Bonnell「Up to 60% of rebrands fail.」(LinkedIn, 2026)
Wixブログ「ロゴとは?知っておきたいシンボルマークとロゴマークの違い」

Atsushi Ichikawa

WRITTEN BY