Title それぞれの立場で感じる海外出張

Date 2024.02.27
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会社として、社員さんに出張を命じることがあると思いますが、出張を命じられた社員さんの気持ちを考えたことはありますか?
というのも、以前、「子会社があるフィリピンへ1週間ほど出張して、フィリピン人スタッフと仕事しながら技術交流をして欲しい」と社員さんに伝えると、「嫌です」と断られたことがありました。
「あれ!?確か、出張=業務命令ではなかった!?」と経営陣と総務担当とで何度も調べました(汗)

さて、今回、同じく子会社があるフィリピン(マニラ)へ出張を命じられた社員さんにアンケートしてみました。(今回は断られませんでした!)
一人は社内で若手ポジションのスタッフで、そもそも海外旅行が初めてのデザイナー。
もう一人は数年前に一度フィリピンへの出張経験があるディレクターのチーフです。
両者の違いも興味深いので、弊社のリアルを気楽に御覧ください。

さらに、フィリピン法人に駐在している日本人マネージャーの目線からのコメントも共有させていただきます。

【CASE1】海外旅行・初めてのスタッフ

今回が初めての海外ということで、具体的にどんな不安がありましたか?

英語の不安(学生時代テストで20点でした)

衛生面の不安(トイレ、水、空気)

食べ物の不安(お腹の調子が悪くなったらどうしようなど)

どうやら、期待よりも不安の方がはるかに大きかったとのこと。
「フィリピンが…」と言うより、言葉も文化も違う「未知の場所へ行く」という不安が大きいようです。
冒頭に登場した業務命令をあっさり断ったスタッフも同じく、不安や恐れを感じたのだと思います。
そう考えてみると、遣唐使やジョン万次郎、勝海舟ってすごいですよね。

行ってみたい国はどこでしたか?

オーストリア(モーツァルトが好きで、モーツァルトのお墓に行ってみたい)

ちなみに海外に行ったことがない人たちにこの質問をして、「フィリピン」と答えた人にいまだかつて出会ったことがありません(笑) 。北米と欧州が人気ですね。

フィリピンへ行くことになって、心配されませんでしたか?

渡航直前にフィリピンで地震や火事が起こっていたり、治安の面でも身を心配されていました。

実は、フィリピンには活火山もあり、日本ほどではありませんが、地震も多い国です。
フィリピンにも耐震基準があり、1992年以降に建てられた建物についてはその基準が設けられています。 ところが、2000年代に建てられたスーパーマーケットが、耐震基準で想定されいる範囲内のマグニチュードにも関わらず、倒壊したりしていますので、不安ですね・・・

また、「マニラ」でキーワード検索すると、治安の悪さについての情報がかなり出てきますので、「怖いから、行くのをやめておこう…」と考える人がいてもおかしくはありません。

初の海外(フィリピン)はいかがでしたか?

不安に思っていた事が想像以上に小さいことでした。

英語が喋れなくても、知っている単語や翻訳ツールでどうにかなった。

便座の無いトイレも空気イスでなんとかなる。

ご飯がおいしかったです。

経験してみないとわからないことばかりだと思いました。

前回出張してもらったスタッフの中にも、海外に行くのが初めてというスタッフがいましたが、同じように「案ずるより産むが易し」といった感想を持ったようでした。

一番印象に残ったことは何ですか?

街や人の違いに驚きました。

ひとりワンタスク(ドアマンや異常に多いスーパーのスタッフなど)。

人口が多いから車やバイク(絶対に二人乗ってる)が縦横無尽に走っていた。

初めての海外の場合、比較対象は日本になるようです。

ひとりワンタスクというのは、雇用契約もあるのでしょうが、一人あたり、一つのタスクのみを担当するということです。
例えば、ホテルの受付が混雑していても別のスタッフが手伝いにくることはありません。
契約に無い仕事をやらせるのは、契約違反になってしまいますので要注意です。

出張は業務命令だと知っていましたか?

はい。

・・・と答えたこのスタッフも「行かない、は選べるんですか?」と確認したとのこと(笑) すると、マネージャーからは「仕事だから」と返ってきたみたいです。

もちろん無理強いはしませんが、不当な出張命令でない限りは、それを拒否すると業務命令違反になってしまいます。
その場合、会社側も「業務命令違反になるけど、どうしよう」と正直困ってしまいますね。
労働契約や就業規則違反になりますから。

フィリピンへの海外出張と聞いて率直にどう感じましたか?

素直に驚きましたが、色んな食べ物やお酒が飲めるのか〜と思ってワクワクしていました。

今回は単身で行くわけではありませんでしたし、フィリピンには日本人マネージャーが常駐しています。 そして、フィリピン法人の立ち上げのために3年半ほどフィリピンに暮らしていた弊社の会長が空港まで迎えにいくことになっていたので、大きな不安は無かったかもしれません。

また、前回渡航したスタッフからもある程度情報を得ていることが大きかったと思います。

海外出張に際しては、「社員さんの不安をいかに取り除くか?」という点について、企業側がしっかり考えないといけませんね。

前回、出張したスタッフからの情報で役に立ったものはありましたか?

フィリピンのトイレ事情。

フィリピンメンバーの楽しそうな雰囲気。

滞在中の過ごし方(スケジュール)。

海外のトイレ事情は皆、気にします。
海外経験が豊富な方だと分かると思いますが、日本のトイレは世界でトップレベルにキレイなので、アベレージで日本を超えるのは難しいですね。
ちなみに、フィリピンのトイレ事情は田舎と都心部とでは雲泥の差があります・・・

次にフィリピンに行くメンバーに伝えたいことは何ですか?

心配性な人ほど不安はたくさんあると思いますが、予測・準備していけば大体のことは安心できました。中の過ごし方(スケジュール)。

日本人のマネージャーが駐在しているなど、強い味方がいるので安心できると思います。

いつもとは違うチャレンジを楽しんでいただきたいです。

行った人は必ず同じようなことを言うから不思議ですね。

このスタッフは、「海外に憧れはあるものの、行くとなると不安もあるし・・・それなら日本でいいや」と考えてしまうと話していました。
確かに日本には四季があり、山や海などの自然も豊かで、歴史的建造物も多く、大都市もあり、食べ物も美味しく、清潔で安全ですから、そう考えてしまうのもわかります。
でも、それでは日本を外から見る、知る経験を積むことができませんし、海外を見て視野を広げることもできません。
海外に行けば、日本の至らぬ点、残念な点にも気付けるでしょうし、逆に素晴らしい点にもたくさん気付けるはずです。
次代を担う若い人たちが、外から日本を見る機会を創出していくことは、日本の未来にも関わる重要なことですね。

【CASE2】フィリピンは2度目のチーフ

今回、出張の目的を明確にしましたが、どんな影響がありましたか?

最初は目的設定に大いに迷いましたが、一度決めたら、現地で何に取り組むか、迷わず絞り込むことができました。また、ゴールが明確になったので事前準備ができました。

フィリピンに駐在している日本人マネージャーが「個人的に実現したい目標でもいいんじゃない?」と言ってくれたので、素敵な未来を描けてとてもポジティブ&エキサイティングな気分で参加できました。

フィリピン法人のメンバーともできるだけ話そうと思っていたので、そのイメージが事前に持てたこともよかったことです。

最初の出張は、「フィリピン法人の存在を知ってもらう」「フィリピンという国を知ってもらう」ということを目的にしていました。 「フィリピン法人が親会社である日本法人のメンバーを招待する」という格好でした。 その結果、どうしても受け身の出張になっていました。
能動的に気付きや学びを得てもらうために、目的をスタッフ自ら設定してもらうことは大切ですね。

前回のフィリピン出張との違いは何でしたか?

チーフになったこと。 主体的に行動することの大切さを知っての出張でした。 当時は、参加できる喜びはありましたがスーパー受け身・依存状態の出張でした。

前回は目的がなかった。 無計画であったため、たくさん業務を抱えたまま行くなど、現地での時間を満喫する準備ができていなかったです。 その結果、疲れもあって、「あー汚いー」「エアコン寒いー」など、ネガティブマインドになってました。

海外への興味が高まっていた。 日頃、フィリピンメンバーとやりとりしたり、英語を学ぶうちに世界に興味が高まった。少し客観的に自分や日本を見られるようになったので、いろんな視点で海外を見てみたい気持ちが高まっていました。外国人恐怖症もなくなりました。

初めての海外のスタッフとのペア。 「後輩にピリッとしたところを見せて欲しい」と言ってもらったことが大きかったかもしれません。

このチーフは最初のフィリピン出張の頃とは違い、主体的に行動し、出張を有意義にしていく姿勢が感じられました。
このように各人の成長フェーズ(立場や意識の変化など)によって、海外出張で得られるものは大きく違いそうですね。

次回、フィリピン出張に行くとしたら、何がしたいですか?

一番は、もっとフィリピンメンバーと会話を深めるたい。 雑談してバックグラウンドを知ったり、業務も持って行って依頼&相談したり、アイデアを聞いたりしながら、彼らをもっと知りたい。 あと3回ぐらい一緒にご飯に行きたかった。

ザ・ビーチリゾートを満喫したい。マンタと泳ぎたい。

フィリピンにはきれいな海、ビーチがありますが、実は首都のマニラ(マカティ)からは遠く、飛行機とバス、ボートなどで移動する必要があります。
あと、マンタより、ジンベイザメやニタリザメが有名かも!?

子育て、家事もある中での海外出張(業務命令)でした。主婦ならではの難しかったこと、気になったことはありますか?

家族の理解を得ること。 主人は気持ちよく送り出してくれるタイプの人ですが、実際に家事の大半を担ってるのは私なので、いなくなったら大変になるだろうと思いました。

このチーフは小学生のお子さんがいらっしゃる中で海外出張に応じてくれました。
会社は出張を命じればいいだけですが、当然、社員さんにも色んな事情があります。
社員さん及びご家族の協力があって、というのを忘れてはいけませんね。

外から見た日本はいかがでしたか?

日本は、安全・清潔。交通機関がものすごく発達していてどこにでもすぐ行ける。

日本は、教育や食べ物や住まいが得られる。

日本は、上質なサービスが無料で受けられる。

日本に居たら当たり前なことも、海外ではそうではありません。
そこに気づけるだけでも大きいと思います。

フィリピンの若者の多さ、エネルギーに驚いた。 一方で、日本は人口減少・高齢化でどんどん経済は弱くなるし、諸外国に抜かれていく未来がすぐ来ます。 突然大きく変化しそうで怖いです。そこに対する危機感が少ない。

各方面でドメスティックなので、世界とつながるイメージも持ちにくい環境かなと思います。 子供たちにはもっと世界に出る選択肢を作ってあげたい。

少子高齢化においては、ポジティブに捉えたら、他国に先駆けて日本は何か生き残り策を示せるかもしれない。

海外に出て日本を客観的に見ることで、危機感も感じます。
日本を外から見る若い人たちが増えていくと、日本の未来も変わるかもしれませんね。 会社ができる未来への貢献としても、その機会を創っていきたいです。

前回、出張したスタッフからの情報で役に立ったものはありましたか?

ホテルの設備や快適度。

渡航のスケジュールの慌ただしさとかのリアルな声です。

レンタルWi-Fiなど、準備し始めると「あれ!?これどうするんだっけ?」ということがいっぱいあって、経験者に聞けることがすごく助かった&安心でした。

バックパッカーや旅慣れた人を除いて、ホテルのクオリティを気にする人は多いです。
見た目に汚かったり、ゴキ◯リが出そうとか、そういうのはNGなようです。

【CASE3】フィリピンに8年間駐在している日本人マネージャー

初めて参加したスラムツアーはいかがでしたか?

フィリピンに出張するスタッフには、スラムを見てもらうことにしています。 フィリピン法人があるマニラのマカティという都市は、金融ビジネスエリア。いわゆる大都会です。 そこで働くホワイトカラー(弊社のスタッフも含みます)は、大学や専門学校で一定の教育を受けた人ばかりですが、これは恵まれたフィリピン人と言えます。 こうした側面だけを見て、フィリピンを知った気になるのではなく、もう一方のリアルな側面も知ってもらいたいと考えています。

駐在している日本人マネージャーは2016年からフィリピンにいますが、実はスラムツアーは初体験でした。

そういった場所があってどんな環境なのか、というのは話では聞いたことはありましたが、やはり自分で見ると感じるものはありました。

フィリピン法人のメンバーはフィリピン国内でも比較的恵まれた、または努力してきた人が集まってきているという点について改めて感じられた。

教育が行き届く環境に居られるのは恵まれたことだと気付かされた。

限られた環境の中でも(弊グループのカルチャー)「Let’s Enjoy」の精神は重要だと思いました。

まだまだ何も思いつきませんが、フィリピンに貢献できることが何か無いか、考えられるキッカケになったと思います。

弊社では、スラムの支援団体を通して、ツアーを申し込んでいます。
費用が団体の活動資金となり、食料品の支援や、子どもたちの修学支援などにあてられます。
ちなみに、弊社の会長は色んな人をスラムツアーに連れて行くので、「もう、あなたは参加費は要らないよ」と言われているそうです。

出張メンバーの様子で印象に残ってることはありますか?

フィリピン渡航に対して主体的に関われているか、そうでないかで行動一つとっても大きく変わってくるんだな、ということを実感しました。

フィリピン渡航が2回目のチーフについて、初めてフィリピンに来たときは、「何を食べたいか?」という小さな行動一つでもただ与えられたモノを受け取り、恐る恐る口にしていました。ところが、今回はアレも食べてみたい、コレも食べてみたい、と食事だけでなく沢山の事にチャレンジしている様子がうかがえました。

渡航メンバーの組み合わせが、マネージャー職と一般社員という組み合わせでしたが、『ビジョン心理学』で言うところの「自立」と「依存」の関係性を分かりやすく感じることが出来ました。 依存状態になっている事自体は悪い事ではありませんが、今回の渡航で依存状態になっている事を自覚し、自立に向かってもらえる良い機会になれば嬉しいです。

受け身ではなく、主体的に関わるというのが重要なのかもしれませんね。 そのため、企業側としては、「いかに主体的に動いてもらうか?」の仕掛けを意識する必要があります。

日本からの出張者が、フィリピンに滞在している期間中、心がけていることはありますか?

第一に「楽しんでもらいたい」というのは考えています。 というのも、嫌な体験をしてしまうと、せっかくの貴重な経験や学びに上書きされてしまいますから。

弊社のカルチャーLet’s Enjoyの精神を発揮してもらえると嬉しいです。

フィリピン法人のメンバーとの交流のハードルを下げてほしいなと考えています。 フィリピンメンバーも日本メンバーに興味を持って接してくれますし、自分の英語力に不安を感じていたとしても、案外伝わるものです。

目標の重要性を感じてほしいと考えています。 「何となく楽しかったな」で終わってしまわない様にするためにも、目標というのは重要になってくると思います。 やらされる義務感が出てしまう様な目標ではなく、「こうなったらもっと楽しくなるだろうな」というポジティブな目標を立ててみるといいですね。

フィリピンに限ったことではありませんが、海外は安全で清潔な日本とは違います。
文化、慣習も当然異なります。 海外に不慣れなスタッフも多いので、滞在中は企業側としてもしっかりサポートするように心がけています。

日本メンバーと直接会うことで、フィリピンメンバーに何か変化がありましたか?

日本だけでなく世界中でも『熟知性の法則』は成り立つんだなと感じています。 直接会ったことのある日本のメンバーとオンラインで打合せする際、フィリピンメンバーの表情も明るく感じます。

日本企業が親会社というのは知っていて入社しているので、そもそも日本に興味を持っているメンバーが多いです。そのため、日本メンバーと業務以外でもコミュニケーションを取れるのは嬉しいと感じているんじゃないかと思います。

ビデオチャットのやり取りではつかみ取れ無い情報も多くあります。
直接会ってコミュニケーションをとると、その場の空気感のような曖昧なものがいかに大切かがわかります。

今後日本から渡航するメンバーに期待することは?

積極的に楽しんでもらいたい。

遠慮せずフィリピンメンバーとコミュニケーションを取ってもらいたい。

ワクワクする目標を立てて、少しでも目標に近づく機会にしてもらいたいこと。

様々な文化背景や考え方を持っている人と交流、環境に身を置くことは、自分の視野を広げる一つの要因にもなると思うので、ぜひ色々とチャレンジしてもらいたい。

長く駐在しているマネージャー自身が体験して、学んだ中からのメッセージですね。
(実は、彼もフィリピンが初めての海外でした。)

今回は、海外が初めての一般社員さん、フィリピンが2度目のチーフ、フィリピンに数年間駐在しているマネージャー、3者それぞれの視点が感じられるアンケート結果となりました。

また、業務命令とは言え、出張を命ぜられた社員さん側の視点もわかる興味深い内容でした。

会社側としては、単に業務の成果だけでなく、「社員さんの人生にとってプラスになるような出張とは?」という視点を持つことは大切ですね。