ライオンハートのフィリピンオフィス「LH&Creatives Inc.」(以下LH&c)でマネージャーをしている鵜飼です。
前回は、日本とフィリピンで離れて働くなかで、途中の状態を見せてくれる人と仕事がしやすい、という話を書きました。
▶ 前回の記事:離れて働いて分かった、仕事がしやすい人
ただ、途中を見せられるかどうかは本人の心がけだけでなく、見せやすい場があるかどうかにも左右されます。今回は、LH&cで続けているKnowledge Sharing Meetingという知見共有の場についてです。
始めた頃のKnowledge Sharing Meetingとその限界
LH&cは少しずつメンバーが増え、目が届かない範囲が出てきました。そこで、定期的に情報を共有する必要があると考え、2024年3月に始めたのがKnowledge Sharing Meetingです。
当初は、私が講師役になってメンバーに教える勉強会でした。ルールは次のとおりです。
- 月に1回、1時間
- 毎回テーマを決めて、スライドを用意する
- 講師役の私が話し、メンバーはそれを聞く
教える側と教わる側がはっきり分かれていて、流れは一方向です。知っている人が知らない人に伝えるのだから、それが自然だと思っていました。
ただ、続けていくうちに限界が見えてきました。テーマを探し、1時間分の話を組み立て、スライドにまとめる。これを通常の業務と並行して一人でやろうとすると、月に1回より増やすのは難しく、回数はどうしても限られます。
一方で、共有したい知見は増えていました。AIの登場で、日本でも作り方や考え方から見直していこうという流れになり、2026年3月には社内外の事例を共有するワークショップが始まっています。道具ややり方が変わっていく時期に、共有の場が一人の準備待ちになっている状態では、時流の速さに追いつくのは難しいと判断しました。
そこで、2026年5月から全員の持ち回りに切り替えました。

新Knowledge Sharing Meetingのルールと目的
持ち回りにあわせて、ルールも変えました。
- 隔週で、15分を目安にする
- スライドは任意で、画面共有だけでもよい
- 担当のメンバーが小さなネタを一つ共有し、残りの時間は質問やフリートークにあてる
時間を短くし、準備をほとんどいらないようにしたのは、共有のハードルを下げるためです。以前と同じように1時間の発表とスライドを求めると、準備に時間がかかり、結局また回数が減ります。完成した資料より、今気づいていることを早く出してもらうほうを優先しました。
目的はもう一つあります。自分でトピックを探し、自分の言葉で説明する経験を、一人ひとりに積んでもらうことです。
LH&cは、デザイナーとエンジニアを中心としたクリエイターの組織で、ある程度内容が固まったものを形にしていく仕事が多いのが現状です。そうすると、何をつくるかが決まった段階から関わることになるため、人前で話す機会がなかなかありませんでした。
何を共有するかを自分で選び、自分の言葉で説明する。日々の業務では得にくいその経験を、持ち回りの15分で積めるようにしたいと考えました。
持ち回りにしてからの変化
講師役を置かず、若手も含めた全員の持ち回りにしても、会は問題なく回っています。テーマは自由にしていますが、AIをはじめとした新しい情報や、試行錯誤の話が自然と集まり、ツールの紹介や実装の品質に関する話など、目立たないけれど実務で役に立つネタも幅広く出てきます。一人で考えていた頃には、ここまでの幅は出せていませんでした。
やり取りの面では、質問が出る場面を以前より見かけるようになりました。
私が講師役をしていた頃、話し手はいつも上司でした。聞く側からすると、質問や意見を出すのに少し構えるところがあったのかもしれません。同僚が話しているなら「それはどういうこと?」と気軽に聞ける。持ち回りにして変わったのは、話す人だけでなく、話す人と聞く人の関係でもあったのだと思います。
教える人を一人に決めていたことで、共有の回数を減らしていただけでなく、メンバー同士のやり取りまで狭めていたのかもしれません。
立場で分けない知見共有
ライオンハートでは、国籍や年齢、キャリアに関係なく目の前の一人とフラットに向き合う姿勢を「BORDERLESS」と呼んでいます。国の境界の話として受け取られやすい言葉ですが、同じ職場の中にも境界はあります。上司と部下、先輩と後輩、教える人と教わる人。
知見を持っているのは、立場が上の人とは限りません。教える側を立場で決めず、知っている人がその都度教える側に回る。そのほうが共有は早く、やり取りも増えます。
日本法人で定期的に行っているワークショップでも、この持ち回りの形を紹介しました。知っていることを気軽に共有し、分からないことを気軽に聞ける。これから一緒に働く人とも、そういう場をつくっていけたらと思っています。




