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2026.08.18

「採れるけど、すぐ辞める」のは、育成の失敗でしょうか。定着は入り口で決まるという話

「採れるけど、すぐ辞める」のは、育成の失敗でしょうか。定着は入り口で決まるという話

「採れるけど、すぐ辞める」のは、育成の失敗でしょうか

この記事でわかることを、先に3行で書きます。

  • 早期離職の多くは、入社後の育成の失敗である前に、選考という「入り口」で埋めるべきギャップを埋めずに通してしまった結果であること
  • 「辞めたい理由」と「実際に辞める理由」はズレており、やりがい対策だけでは早期離職は止まらないこと
  • 定着を入り口で設計するために、経営者・人事責任者が今日からできる3つのこと

採用の振り返り会議で、こんな言葉を聞いたことはないでしょうか。「せっかく採れたのに、また数か月で辞めた」。原因を探ると、「現場の受け入れが悪かった」「本人の忍耐力が足りなかった」という話に落ち着きがちです。育成計画を見直し、フォロー面談を増やし、それでも次の年、また同じことが起きる。私たちは、この堂々巡りに何度も立ち会ってきました。

「すぐ辞める」のは、育成の失敗でしょうか

早期離職はなぜ起きる?

結論から言うと、早期離職の多くは、育成が甘かったからではありません。入社前の段階で、本人と会社の間にあったギャップを、誰も埋めないまま通してしまったことの結果です。

厚生労働省の調査(新規学卒就職者の離職状況、令和3年3月卒業者対象、令和6年10月発表)によると、新規大学卒業者の就職後3年以内の離職率は34.9%。およそ3人に1人が、3年以内に最初の会社を去っています。この数字を見て「今の若者は忍耐力がない」と読む方もいます。ただ、それだけでは説明のつかないデータがもうひとつあります。

リクルートマネジメントソリューションズの調査(社会人1〜3年目対象、2026年6月公表)では、「辞めたいと思ったことがある」と答えた人が62.2%にのぼる一方、辞めたい理由の1位は「仕事にやりがい・意義を感じない」(21.8%)でしたが、実際に離職した理由の1位は「労働環境・条件がよくない」(22.4%)でした。つまり、辞めたいと思うきっかけと、実際に辞める引き金は別物です。会社側はやりがい対策——研修や意義づけ——にばかり投資し、実際の離職を引き起こす労働環境や裁量権のギャップを放置しがちだ、ということです。育成やフォロー面談を厚くしても離職が止まらないのは、そもそも見ている場所がズレているからかもしれません。

さらに言えば、この2つのデータを重ねると、見えてくる順序があります。「やりがいを感じられない」という不満は、入社前から兆しがあることが少なくありません。求人票や面接で語られた仕事の意義と、実際に任された業務との間に、最初からずれがあった。そのずれに気づかないふりをして、あるいは選考する側も気づかないまま、内定を出し、承諾をもらい、入社させてしまう。育成の現場に「やりがいを取り戻すための対策」を求める前に、そもそも入り口で埋められたはずのギャップがあったのではないか——私たちは、まずそこを疑います。

会社・組織では、定着を「入り口」で設計できているでしょうか

結論から言うと、定着は入社後の努力だけで決まるものではありません。選考の段階で、会社が「うちで働くとはどういうことか」をどれだけ正直に、具体的に伝えられているかで、大きく決まります。

私たちは、採用を人事部門の一作業ではなく、会社の未来をつくる仲間を探す経営活動そのものだと捉えています。会社の未来から逆算せずに「とりあえず人数を埋める」選考を続けていれば、入社後にギャップが表面化するのは当然です。私たちが人事のご相談を受けるなかで、繰り返し実感することがあります。それは、採用の点——求人媒体を変える、面接官のスキルを上げる——を個別に磨いても、3年後の組織像から逆算されていなければ、本質的な改善にはつながらないということです。

だからこそ私たちは、自社の採用でも「1ミリでも確信が持てないなら、採用しない」という姿勢を大事にしています。人数を埋めるための妥協は、会社にとっても、現場にとっても、そして採用された本人にとっても、誰の得にもならないと考えているからです。極端に聞こえるかもしれませんが、「この人だ」と思える出会いがなければ、その年の採用人数はゼロでもいいとさえ思っています。これは理想論ではなく、早期離職という形で払うコストの大きさを、身をもって知っているからこそ持てる基準です。

正直に言うと、私たちも最初からこの基準を持っていたわけではありません。採用や組織づくりで壁にぶつかり続け、外部の若手からも学びながら、少しずつ言葉にしてきたものです。人数目標を優先して、迷いを飲み込んだまま採用した年もありました。そのたびに、入社後のミスマッチという形で、代償を払ってきました。基準は、失敗の中から言語化されていくものであって、最初から完成した教科書として持っている会社は、おそらくどこにもありません。

誰が選考しても「合う人だけが残る」設計とは、何を決めることか

誰が選考しても「合う人だけが残る」設計とは、何を決めることか

結論から言うと、合う人だけが残る選考とは、コンピテンシー——会社の未来から逆算して定義する、うちで活きて成果につながる行動や持ち味——を具体的な言葉にし、選考のあらゆる接点でそれを正直に伝えることです。

まず、選考のステップ数そのものに意味があります。私たちは、選考ステップが多いことを非効率だとは考えていません。役員面接、現場社員との対話、適性検査、筆記試験など、複数の角度を用意するのは、会社が一方的に候補者を選ぶためではなく、候補者にも会社の実態を多面的に知ってもらうためです。一度の面接、一人の面接官の印象だけで合否を決める選考は、早く終わる代わりに、双方が「思っていたのと違った」という賭けをすることになります。

次に、候補者が「ここで働く自分を想像できるか」は、会社の知名度や条件面だけで決まりません。むしろ、一次面接後の連絡の速さや、課題提出後のフィードバックがいつ返ってくるかといった、選考中の日々の対応そのものが、入社後の会社の働き方として見られています。返信の遅さやフィードバックの不透明さは、些細な運営上のミスではなく、候補者にとっては「この会社で働く自分」を想像する材料そのものです。良い面だけを見せて口説き落とすのではなく、選考のプロセス自体を、入社後の縮図として設計する。これが、私たちの考える「入り口の設計」です。

もうひとつ、見落とされがちな観点があります。雇用形態によって選考の丁寧さを変えていないか、という点です。正社員は時間をかけて見極めるが、パートやアルバイト、インターンは急いで頭数を揃える——こうした運用をしている会社は少なくありません。ですが、役割が違っても、仲間として迎える重さは変わらないはずです。雇用形態を理由に選考の解像度を落とすことは、その形態で働く人たちの早期離職を、会社が自ら設計してしまっているとも言えます。

今日からできる3つのアクション

  • 直近の早期離職を、育成の問題と選考の問題に仕分け直す。 「もっと丁寧に教えていれば防げたか」「そもそも選考の段階でギャップを伝えられていたか」を分けて振り返るだけで、打ち手の的が変わります。
  • コンピテンシーを3つだけ、行動として書き出す。 「主体性がある人」ではなく、「指示を待つ前に、現在地と目的のギャップを自分なりに埋めようとする人」まで具体化し、面接での問いに変換します。
  • 選考中に、良いことだけでなく大変なことも1つ開示する。 忙しい時期の実情、うまくいかなかった経験など、きれいに整えすぎない情報を1つ加えるだけで、選考は入社後の縮図に近づきます。

まとめ——辞めるのは、本人の忍耐力でしょうか

「せっかく採れたのに、また辞めた」という振り返りをするとき、私たちはまず、こう問い直したいのです。辞めるのは本人の忍耐力の問題だったのか、それとも、合わない人をそのまま通してしまった入り口の設計の問題だったのか。

早期離職は、入社後にどれだけ手厚くフォローしても、選考という入り口で埋めるべきギャップを埋めなければ、繰り返されます。採用の失敗は教育では取り返せないというのが、私たちの一貫した考え方です。ライオンハートは、ブランディングの現場で培ってきた「曖昧な言葉を具体化する技術」を使い、コンピテンシーの言語化から選考プロセスの設計まで、定着を入り口からつくり直すお手伝いをしています。自社の選考が、どこまで正直に「うちで働くこと」を伝えられているか、一度一緒に見てみたい——そう感じられたら、どうぞお気軽にお声がけください。

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