DX化って最近よく耳にしますよね?
ここ最近のトレンドキーワードということで、ITの系の展示会に行けば「DX」という言葉がいたるところに掲げられている状況です。
この「DX」という言葉ですが、経済産業省の定義によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」とのこと。
かなり高尚な!?ものですが、実際には、DX化とうたいながら、デジタル化、IT化にとどまっているケースも少くありません。
現在、マーケティングのトレンドキーワードとして「DX」が乱用されている状態と言えます。
実は、弊社もそのブームに乗り!?今年から本格的にバックオフィス業務のDX化に取り組んでいます。
かく言う弊社も、実際には、まだまだデジタル化、IT化止まりかもしれませんが・・・ ただ、徹底することで、「競争上の優位性」につながると感じますので、ここではDX化という表現を使わせてもらいました。
筆者は普段バックオフィス業務(労務経理)を担当しているため、バックオフィスDX化については、推進メンバーとなっていました(汗)
これまでも納税のオンライン化などの小さな取り組みはしてきましたが、今回は勤怠管理システムを新たに導入するという、全社的な取り組みに挑戦することになりました。
今回は、その推進にあたってどのような創意工夫をしてきたか、社内にどんな変化が起こったかについてお伝えしたいと思います。
DX化の背景
DX化にあたって、勤怠管理システムの導入を選んだきっかけは、「戦略人事」でした。
弊社ではこの2、3年間、執行役員が人事(主に採用)の責任者となり、「人手が足りないから採用する」というどんぶり勘定の採用計画ではなく、ビジョン、経営計画に沿った「戦略人事」の導入を推し進めてきました。
その「戦略人事」を実行するために、人件費や各人の生産性を正確に把握する必要が出てきたのです。
運用までの準備
導入にあたっては、社労士さんと事前に何度も打ち合わせをしました。
会社によっては勤怠管理システムが社労士さんの業務の競合になるので、事前に相談(お伺い!?)をしておいたほうがスムーズだと思います。
システムを導入する際に初期設定を行うのですが、労働基準法に関わる箇所も多いですので、社労士さんに相談することをおすすめします。
さらに、推進メンバーとして、皆に操作方法をレクチャーする必要がありますから、事前に試験運用も行いました。
運用開始にあたっての工夫
運用が始まると必ず質問や問題が発生します。
それらを迅速に解決するための環境を事前に整えることにしました。
①専用チャットルーム
質問しやすい環境作りがポイントです。
チャットを活用すれば、各々のタイミングで質問・回答ができますし、そのやり取りは即時全社員に共有できるのも便利です。
推進チームから伝える情報や、質疑応答などのやり取りをここに集約することにしました。
②社内wikiで運用ルールの共有
弊社では、社内の様々なナレッジを蓄積し、共有できる社内wikiを活用しています。
チャットルームでやり取りした内容をもとに運用ルールの原案を作っていきましたが、実際に運用していくとルールの改定や追加が発生していきます。
そこで、アップデートされていくルールを社内wikiで公開・共有し、誰が見ても理解できるようにしました。
こうすることで新しいメンバーが入社した際には、マニュアルとしても活用できます。
戦友の存在
推進メンバーには、私ともう一人心強い仲間がいました。
前述に登場した人事責任者の執行役員です!
勤怠管理は人件費(給与)に直接関係してきます。
そのため、筆者だけでは判断に迷うことも多かったのですが、経営判断ができる人間がメンバーにいることで「判断待ち」の時間を最小に抑えることができました。
全社的に新しい取り組みへ挑戦したり、新しい仕組みを導入する場合、経営判断ができる人間、決済ができる人間をメンバーに加えることをおすすめします。
一社員では判断できないことや、ブレてしまいがちなところは、彼らを頼ることでスムーズに進めることができます。
弊社では一社員と役員の距離感が近いというのもありますが、推進プロジェクトに仲間がいることで孤独を感じずに済みました。
本格的な運用までに時間を要する分、準備は集中力を持ってテンポ良く進めることがポイントです。
他業務と兼務でこのプロジェクトに関わっていましたから、もし一人で進めていたら運用開始が何ヶ月先になっていただろう・・・と思います。
いよいよ全員で運用開始
全社員にアナウンスするために使ったのが、全体朝礼でした。
そこでは、まず導入の目的を全員に伝えていきます。
そして、皆に協力してもらうこと(出退勤時の打刻、残業&早出の申請&所属長承認)を伝え、社内wikiに掲載しておいた運用ルールや操作マニュアルをもとにレクチャーを行いました。
今回導入した勤怠管理はタイムカードが、一般的なものでした。 そのせいか、自分の勤務形態に当てはめて「この場合はどうすれば良いのだろう?」と、具体的な質問が多く出たのが印象的でした。 質問から皆の理解度もわかりますし、全体朝礼が推進の第一歩として良い時間になったと感じました。
さらに、嬉しかったのが、社員の一人が、朝礼時の質疑応答を自発的に社内wikiにまとめてくれていました。
こういう協力は推進メンバーとしては本当に嬉しいですね。
弊社の理念は「笑顔想像」ですが、その社員さんによって私の笑顔はしっかりと創造されました♪
実際に運用を開始してみて
①質問への即答
運用が始まると、質問や問題が・・・もう、たくさん出てきました・・・汗
これまで様々な取り組みをしてきましたが、今回ほど質問が多く、関心が高かったことはありませんでした。
給与(残業)に関わることなので、皆が主体性高く、自分ごととしてこの取組に参加してくれていることを実感しました。
それだけに推進メンバーの私たちも改めて緊張感が高まります。 一方で、いつもこれぐらい主体性を持ってくれたらなぁ・・・と、感じたりもしました。
ここでは、質問への回答をできるだけ早く行うことを心がけました。
せっかく関心を持って参加してくれているので、この熱が冷めてしまってはバックオフィスのDX化どころではありませんから。
②打刻の習慣化
朝のルーティーンに打刻が習慣化されていないため、打刻を忘れる人が続出!
我々推進メンバーは、いささか泥臭い方法とは思いながらも、リモート勤務のメンバーへはチャットでアラートを出し、出社するメンバーへは声かけをして回りました。
こうしたおせっかい!?も毎日続くとストレスになりかねないので、会社の扉に「打刻」と書いたプレートを掲げてみたりもしました。
DXとは程遠い、ものすごいアナログな方法ですが・・・
さらに、打刻を忘れるとどんな影響が出るのか?をしっかりと説明しました。
勤務時間を後で修正することになるので、責任者である上長の時間を奪ってしまうよ、と。
この草の根運動のような泥臭い活動が功を奏してか、仲間同士が声掛け確認し合うようにもなりました!
本格運用まで2ヶ月ほどかかると想定していましたが、皆の協力もあり、かなり前倒して本格運用に漕ぎ着けることができました。
今回の勤怠管理システム導入プロジェクトでの気付き
打刻を促す声かけだけ切り取ると、なんとも低レベルな改善方法に思えますが、実は副次的効果もありました。
声掛けがきっかけとなり、社内のコミュニケーションが増えるなど、思わぬ影響が出たのです。
例えば、システム上はオンラインで全てが完結するのですが、部署の朝礼・終礼では各自仕事の進捗状況を共有し、残業申請などを行うようになり、同じ部署の仲間の状況をより正確に把握できるようになったのも成果の一つです。
最近、仲間の残業が多いことを知れば、自ずと気遣いが生まれ、「体調大丈夫?」などとコミュニケーションが生まれるのです。
新しい仲間が増えた際は、部署内で勤怠管理システムの使い方やルールをレクチャーをしてもらおうと考えています。
やっていることを人に説明することでさらに理解が深まりますし、部署内での接点を増やしすことで、より円滑なコミュニケーションを実現できるのでは!?と期待もしています。
この勤怠管理を推進するにあたっては、プロジェクト管理ツールの導入プロジェクトが大いに参考になりました。
そのプロジェクトのリーダーは、導入・推進の苦労を知ってか、今回とても協力的に動いてくれました。
新しい仕組みを導入していくには、相応の労力が必要です。
中でも、丁寧な準備と目的の共有、いきなり完璧を求めずに皆の意見を吸い上げながら課題を抽出して改善、そして習慣化していく仕組みづくりがポイントだと実感します。
さて、この勤怠管理システムが社内に根付いていくことで、冒頭でお伝えした背景にある「戦略人事」は加速していくことでしょう。
会社の規模を大きくしたい、生産性や収益性を高めたい場合、バックオフィス業務の効率化は案外盲点だと思います。
どうしても後回しになりがちですからね。
経理や労務から得られる数字は、経営にとっては重要な判断材料となるからです。