Title “見える化”させるプロジェクト管理とは?

Date 2022.06.23
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こんにちは!ライオンハートでディレクター、プロジェクト管理リーダーを努めております、中村武です。

今日は、多くの経営者、管理者の方を悩ませる「プロジェクト管理」について、弊社の取り組みをご紹介させて頂きます。
プロジェクト管理といえば、新しいツールを導入してもなかなか浸透しなかったり、社員の方々への伝え方に頭を抱えたり、そもそも何が正解なのか分からない、といった悩みが、つきものだと思います。
そういう僕自身も、プロジェクト管理リーダーになってからの約2年間、そして今も、試行錯誤し続けています。
検討を重ねながら構築し、やっと業務の「ムダ、ムラ、ムリ」を省けたり、コスト管理や遅延対策、社員のスケジュール管理などにおいて、成果を感じられるようになってきました。

プロジェクトを管理するマネージャーとして、複数のプロジェクトを横断的に見えるようにしたことは大きな一歩でした。

悩める管理者の方にとって、少しでも参考になればと、様々なツール、その使い方、目的や効果にも触れながら、ライオンハートの実体験をご紹介していきたいと思います。
1.マネージャー視点で見たプロジェクト
2.新ツールとして「monday」を採用した理由3つ
3.新ツールが社内に浸透するために取った具体的な行動7つ
4.新ツールがもたらしたプロジェクト管理の効果3つ
5.プロジェクト管理によるインナーブランディングの可能性
6.まとめ

 

1.マネージャー視点で見たプロジェクト

ライオンハートでは、brabio(ブラビオ)というガントチャートを簡単に作成できる管理ツールを使っていました。
これは、ExcelやGoogle Sheetsに比べて容易にガントチャートの作成・編集、共有ができ、なかなか便利なツールでした。
しかしマネージャーとして、複数のプロジェクトの進捗状況を横断的に把握したり、スタッフのリソースを把握したりする必要が出てきたときに、現状の使い方でのbrabioは最適なツールではないと感じるようになりました。
例えば、brabioのガントチャートでは、実際にメンバーがどれくらい忙しいのか正確に把握することは困難でした。

「Aさんが忙しそうだけど、果たして何の案件がどう重なって忙しいんだろう」
「今月みんな忙しいっていうけど、果たしてどれほどのタスクを抱えているんだろう」
「今週、もう一件任せられるんじゃないだろうか」

いちディレクターとしてプロジェクトに関わっていた時には、自分が担当するプロジェクトと、そこに関わるメンバーの事を把握していればよかったのですが、マネージャーとして全体のプロジェクトを管理するとなると、そうもいきません。
社内で同時進行するプロジェクトを横断して見る必要があり、文字通り全体を把握する必要が出てきたわけです。
何より、社内のリソースの可視化は私にとって命題でした。
もちろんbrabioでも不可能ではありませんが、「プロジェクト管理」という視点で、より良いツールがないか?改めて探してみることにしました。

【旧ツール、brabio(ブラビオ)のガントチャート実例】

2.新ツールとして「monday」を採用した理由3つ

価格や機能など、様々な側面からツールを比較すると、どれも一長一短ありましたが、最終的に Wrike(ライク)・asana(アサナ)・monday(マンデー) の3つに絞り、弊社ではmondayを採用しました。

①カスタマイズの自由度が高い

mondayの高いカスタマイズ性を活用して、プロジェクトの進行状況やリソースの可視化に取り組みました。
とは言え、標準設定で出来る事は限定的です。
項目の設定や運用のルールなど、自社用に構築する必要があり、やってみると、これが大変でした。 

②利用者が身近にいた

パートナー企業のマネージャーにプロジェクト管理について何気なく相談した時、彼らがmondayを使っていると知りました。
同じような業種でしたし、実際に活用している人が身近にいるというのは心強かったです。
と言うのも、先述の通りカスタマイズ性が高いので、様々な情報を得られるのですが、予め設定の必要があり、この設定が本当に大変でした。
気軽に相談できる先人がいた事は、ツール導入の責任を負う私としてはありがたいことでした。
ツール導入の責任者は私と同じ様に、他の業務と並行して導入を推進していく事がほとんどだと思います。
ところが、ツールを習得する時間やトラブルシューティングにかかる時間は膨大です。
もし、詳しい人からアドバイスを受けられるようなら、有償のコンサル契約をしてでも、積極的に協力をお願いしていく事をおすすめします。

③多言語対応している

ライオンハートのグループ会社、LH&creatives(ITアウトソーシング)はフィリピンにあり、デザインやコーディングなどはそちらに依頼する事が多いのですが、偶然に現地のマネージャーも独自でプロジェクト管理ツールを探していて、mondayのオンラインセミナーに参加したり、調査したりしていたようです。
弊社の場合は、ワークフローの一部を海外のグループ会社が担当することもあり、多言語対応(日本語と英語)のツールが必須条件でした。

 

3.新ツールが社内に浸透するために取った具体的な行動

ライオンハートの業種柄、社員のデジタルリテラシー自体は高い事もあり、ツールの操作自体には大きな抵抗はなかったようにも思うのですが、社内に浸透するために幾つか工夫した事もあったので、具体的に7つ、ご紹介させて頂きます。

①リアル説明会の場を設けた

ツールを導入するなど新しい取り組みを全社的に行う際、同じ事を何度も説明するのは避けたいものです。
弊社の場合、毎週月曜に全体朝礼を行っていますので、その朝礼の後に説明会を設けることにしました。
全員に周知する方法は「会社の方針である」という意味づけもできますし「全員で取り組む」という意識を持ってもらう点でも効果的でした。
また、新しいツールを導入する際には、社内で抵抗感が出るものです。
利用場面と自分のメリットが具体的に思い描けないと、こうした抵抗は出やすいので、実際にありそうなサンプルプロジェクトを用意して、使い方などをレクチャーしました。

②社内wikiに運用ルールを記載する

ライオンハートには、社内の様々なナレッジを蓄積している「社内wiki」があるのですが、mondayの運用ルールなどもそこに記載していくことにしました。
どんな事もそうですが、プロジェクト管理においても、実際に運用が始まると、ルールのアップデートは必ず出てきます。
最新のルールを編集・共有できる環境を用意される事をおすすめします。

【社内wiki内のmonday解説ページ】

基本的なツールの説明や「これをボードと呼ぶ」「これをアイテムと呼ぶ」といった、独特の用語などを書き込んでいき、このwikiを読めば一通りの基本は分かるよ、というものになっています。

③monday運用のチャットルームを作った

mondayに関する疑問や質問をチャットで受け付けた事で、気軽に質問や相談ができる窓口になりました。
ツール導入の際には、こうしたカジュアルな窓口を設けると利用者の声を拾うことができるのでおすすめです。
また、一度に何かを周知する際にも便利で、新たに加えられたルールなどはチャットで告知します。
口頭での周知とは違い、チャットの場合はコメントとして残るため、「そんなの聞いてない」とは言えません。
導入の責任者としては、積極的に活用しています。
ただ、チャットだと情報が流れてしまって、一度逃したやり取りは二度と見ません。
やり取りの内容や質問への回答は、社内wikiに整理して転載していきます。

【monday運用のチャットルーム内】

④毎週、ツール運用のための打合せをした

先述したmondayの先輩利用者には、導入時のコンサルを依頼し、毎週金曜日に打合せをしました。
何か新しい管理ツールなどを導入する際、目に見えないコストとして責任者の習得時間があると思います。
一週間で色んな質問が僕にも出てくるのですが、毎週先輩利用者に相談しながら、運用の方針を固め、打ち合わせ後、チャットでメンバーに共有しました。
経験者に聞ける環境があった事で、スムーズに疑問を解消していく事が出来たと思います。

⑤退路を断った

意外と効果が大きかったのは、brabioを辞めたことかもしれません。
brabioの契約を終了した月の、翌月からmondayを導入したので「何が何でも移行しないとまずい」という状況になりました。
機能によっては、前の方が良かったという声も聞こえてきましたが、戻れないので「やるしかない」という感じでした。

⑥最初から完璧を求めない

メンバーから「ここが使いづらい」「ここは前の方がよかった」という声がなかったわけではありませんでしたが、その度にmondayの良さを力説するのではなく、
「確かにそうだよね」
「完璧なツールはないし、追々アップデートされるんじゃない?」
と、ツールを変えた事による短期的な成果を求めないようにしました。
また、以前のプロジェクト管理では、brabio以外にエクセルのスプレッドシートも併用し、案件の大小によってツールも分けていたのですが、mondayに一元化させるにあたり、エクセルとの併用期間は3ヶ月程度設けました。
いきなり完全移行というよりも、少しずつ社員に浸透するようにし、自分自身も、導入初期は出来るだけ多くの時間を取って、新ツールの段階的な定着に務めました。

⑦入力しない事のデメリットは伝えた

mondayでは、期間ごとの仕事量までビジュアルで直感的に把握する事ができます。
プレッシャーをかけるために「小まめに入力しないと、全然仕事していない人に見えちゃうよ」と言ったわけではないのですが、経営陣も見るツールとして運用することで、主体的な入力に一役買っているように思います。
このように新しい取り組みを根付かせるために、経営陣を巻き込むのもポイントですね。

 

新ツールがもたらしたプロジェクト管理の効果

プロジェクト管理のツールが変わった事で、普段の作業が特段しやすくなる、という事はありませんが、管理者の視点で言うと、横断的に複数のプロジェクトを見れるようになった事で、多くの利点がありました。

①あらゆる評価軸でメンバーの仕事を把握できる

例えば、一人のディレクターが1年間で納品した件数などは、敢えて数えてみない限り分からなかったので「多分、A君よりB君の方が頑張ったかな」という感覚でしか把握できていませんでした。
mondayに一元化させた事で「納品数」だけでなく「平均制作期間」「粗利率」「遅延率」といったあらゆる軸から、月単位、年単位などの期間ごとに数値化できるようになりました。
「単価が低めの案件をたくさん担当してくれているから、平均単価がこのくらいなんだな」とか「外注さんを多用せずに、利益を多く出してくれてるんだな」といった事まで、メンバーの得意や努力の結果、全体としての毎月の成果を、一目で確認できるようになりました。

②利益を予測できる

経理に関しての正確な数字は、決算を終えてからでないと分からなかったのですが、「売上」「粗利率」などが常に表示されるので、ある程度正確に利益を予測する事が出来ます。

③先の状況を見越した判断が出来る

プロジェクト全体が俯瞰できるようになると、人のリソースが不足してくる時期が分かるようになります。
すると、パートナー企業さんに事前にリソースの確保を相談するなど、先手を打つことができます。
逆に、リソースに余裕が生まれそうな時期には、営業に働きかけ、抱えているプロジェクトを前倒ししてスタートしてもらうこともできます。
ある程度の精度で未来が予測できれば、採用や設備投資についても相談ができ、助かります。

【mondayのディレクター別・円状スケジュール】例えば、1週間のマックスの作業時間を40時間と設定しておくと、40時間に達した時点で円が真っ赤になり、この週は、もうタスクを入れてはいけない、という事が分かります。
「来月はC君が結構空いてるはずだ」「3ヶ月後に納品が重なってエンジニアの数が足りなくなる」といった事は、これまでは「長年の勘」でしか分からなかったのですが、mondayで可視化されるようになり、社員のスケジュールも見通しやすくなりました。

 

5.プロジェクト管理によるインナーブランディングの可能性

「自分の仕事を上司がちゃんと見てくれている」と感じながら、個々の能力を発揮できる環境にできればと思います。

プロジェクト管理の次のステップとして、金額に換算できるような『定量的』な評価だけではなく『定性的』な評価軸を、今後は加えていけたらと考えています。
例えば、同じ100万円の案件でも、お客様が違えば、内容も違います。
売上や利益で評価するなら、その数字だけを見て機械的に評価をしていけば良いのかもしれません。
また、売上で評価するなら、同じ100万円でも、100万円の1件を担当する人と、1万円の100件を担当する人がいた場合、どのように評価すべきなのでしょうか?定量的な評価だけでは難しい部分もありそうです。
そこで、金額や納品までの期間、作業時間のような、数値だけ見ても分からないような側面は、例えば「チャレンジング」「クリエイティブ」「プライスレス」といった独自の評価軸を加え、メダルのような感覚で、タグ付けしていけたらと考えています。
他にも「面白いアウトプットを創ったな」「この予算の中で、よくここまでの完成度にしたな」といった、僕が個人的に感じた事は、コメントとして残します。


僕たちの仕事は、大きく言えば「製造業」かもしれませんが、創るものの型番があるわけでもなく、テンプレートが用意されているわけでもありません。
「採用のためにWebサイトのリニューアルを」というご依頼をいただき、お客様にお会いし、会社の事を色々とお調べしてみると「Webサイトを綺麗にするよりも、かっこいいユニフォームを作った方が効果的では」という提案に落ち着く事もあります。
同じ予算であれば、より結果の出る提案をしたいと思いますので、必ずしも提供するものが決まっているとも限りません。
Webサイトと一口に言っても、仕様も見た目も、百社百様です。
何が必要とされているのかを、ゼロからイメージしていくのがディレクターですが、そういった側面が難しさであり、毎回悩む所だったりもします。
売上さえ良ければ何でもいいわけではない、という事を表すためにも、数値だけの評価軸はライオンハートにとってはドライすぎるように感じました。
ライオンハートの理念は「笑顔創造」なのですが、笑顔創造に貢献しないツールや使い方だと社内稟議さえ通りません。
大げさに言えば、mondayでのプロジェクト管理も、理念を踏まえて導入されたものです。
例えば、直接売上に反映しなくても良い仕事をやってくれた社員に対して「プライスレス」というタグを贈った場合、それは、会社としても評価に値するくらい大切にしているのだという事。
さらには「あなたのプライスレスな行動(仕事)は、誰かの「笑顔創造」につながるものだったよ」と伝える事にもなります。
ガントチャートでは表れない多面的な評価軸が可視化される事が、社員の笑顔、モチベーションに繋がればいいなと思います。
また、タグ付けやコメント以外にも、評価軸そのものを増やしていく事で「みんな、自分の得意な事で評価される」という状態になっていくのが理想です。
もちろん僕も同じディレクターなので「リーダー、全然働いてないですね」なんて事にならないように、身を引き締めなくてはいけません。
入力自体は面倒な事ではあると思うのですが、せっかくのツールを風化させないためにも「あの人見てるな」「続けていく必要があるな」と社員に感じてもらえるように、定期的にチェックする時間を取り、それを続けていく事が大切かなと感じています。
現状、エンジニアやデザイナーの予定はGoogleカレンダーで確認しているのですがいずれ「Googleカレンダー、もういらないよね」と言えるくらいのツールに、mondayを育てていく事が目標です。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。まとめとして、
ガントチャートのもどかしさは・・・
●業務にかかる実際の時間が分からなかった
●複数のプロジェクトを横断して見る事に限界があった

新ツールとして「monday」を採用した理由は・・・
①カスタマイズの自由度が高い
②利用者が身近にいた
③多言語対応している

新ツールが社内に浸透するための工夫は・・・
①リアル説明会の開催
②社内wikiの活用
③monday運用の専用チャットルーム設置
④先輩利用者へのコンサル依頼
⑤退路(旧ツール)を断つ
⑥最初から完璧を求めない
⑦ツールに入力しないことのデメリットを伝える

新ツールがもたらしたプロジェクト管理の効果
★あらゆる角度から、メンバーの努力や得意を把握できる
★利益の予測ができる
★先の状況を見越した判断が出来る

プロジェクト管理がうまくいけば・・・
★社員が自らの得意を把握し、みんな何かで一番になれるといった、モチベーションアップ効果。
★評価を通して、会社がどんなことを大切にしているのかを伝えられる、インナーブランディングの成果も期待できる
といった点について、ご紹介させて頂きました。
何か一つでも、御社のスムーズなマネージメント、プロジェクト管理のヒントになれる事があれば、嬉しく思います。