役員ブログ

フィリピンを選んだ理由は「安い」だけじゃない

ライオンハートのフィリピンオフィス「LH&Creatives Inc.」(以下LH&c)でマネージャーをしている鵜飼です。

前回の記事では、海外のメンバーと働いてみて気づいたことを書きました。「言ったことしかやらない」と身構えていたのに、実際に一緒に働くと「言ったことはしっかりやってくれる」人たちだった、という話です。

▶ 前回の記事:「言ったことしかやらない」と聞いていた —— 海外と働いて見えた、BORDERLESS の意味

ただ、この記事で書いたのは「フィリピンでどう働いているか」の話で、そもそもの「なぜフィリピンなのか」には触れていませんでした。海外に開発拠点をつくるといっても、国はいくらでもあります。

多くの人は「コストを下げるためだろう」という答えを思い浮かべるかもしれません。人件費の安い国に開発を任せる、いわゆるオフショアの発想です。確かに、コストはまったく無関係ではありません。正直に言えば、理由の一つではありますが、それだけでフィリピンを選んだわけではありませんでした。

英語が暮らしに根づいている

分かりやすい理由の一つは、英語です。

フィリピンでは英語が日常的に通じ、仕事のやり取りも英語で回ります。開発の現場でも、メールでも、会議でも、英語で進められる。海外に拠点を持つとき、言葉が通じるかどうかは、想像以上に大きな条件です。

これは暮らしてみるとより実感します。銀行口座をつくるときも住む部屋を借りるときも、交わす契約書は英語でした。マニラ周辺ならコンビニでのちょっとしたやり取りも英語でできます。仕事の場にかぎらず、生活のすみずみまで英語が入り込んでいるのです。

背景には、算数や理科の授業が英語で行われるなど、子どもの頃から英語に触れて育つ教育があります。世界規模の英語能力指標「EF EPI」の2025年版でもフィリピンはアジアで2位、世界でも28位に位置づけられています。日常会話にとどまらず、仕事のやり取りが英語で成り立つ水準の人材が多いということです1

そして、英語で仕事が回る拠点を持つことは、そのまま次の一歩につながります。これまで日本国内で完結していた会社が、外の世界とつながっていくための入口になる。フィリピンは、その足がかりとして理にかなった場所でした。

最初の海外拠点にはちょうどいい近さ

もう一つ、実際に働くうえで効いているのが、距離の近さです。

本社のある名古屋からは、LH&cのあるマニラまで直行便が飛んでいます。フライトはおよそ4時間半、時差はわずか1時間。4時間半というと長く聞こえるかもしれませんが、北海道から沖縄へ飛ぶのと大きくは変わりません。海外拠点というと、まず「遠さ」を思い浮かべますが、実際にはそれほど遠くありません。

この近さは、書類一枚でも実感します。日本に一時帰国しているあいだにフィリピン側の書類へサインが必要になったことがありましたが、送っても1〜2営業日で届き、やり取りが滞ることはありませんでした。

初めての海外拠点で、まだ勝手も分からないうちは、この近さが本当に効きました。何かあればすぐに顔を合わせに行けるし、時間のずれが小さいぶん、同じ時間帯のなかで連絡も取り合える。手探りの立ち上げを乗り切れたのは、遠すぎない海外だったからでもあります。

近い場所で海外拠点を一つ動かしてきた経験は、これから先の広がりを考えるうえでの土台にもなっていくはずです。

若い開発人材が育っていく

いちばん大きな理由は、人です。

フィリピンは、とにかく人口が若い国です。年齢中央値はおよそ27歳。50歳近い日本とは、20歳以上の開きがあります2。これから働き盛りを迎える世代が、分厚く控えているということです。

そのうえで、テック領域で働くこと自体が、この国では当たり前になりつつあります。ソフトウェア開発やITサービスを含むIT・BPM産業で働く人は、2024年時点で約182万人。国を代表する産業の一つにまで育ち、いまも拡大を続けています3。開発の担い手が育つ土壌が、年々広がっているということです。

数字だけの話ではありません。現地で一緒に働いていて感じるのは、学ぶことへの前向きさです。新しい技術にも臆さず手を伸ばし、任せれば任せるほど伸びていく。日本国内でエンジニアを採用し、確保し続けることが年々難しくなっているなかで、ここでなら腰を据えてチームをつくれる、という手応えがありました。

探していたのは、長く一緒にやっていける仲間でした。それを見つけられる場所かどうかが、何より大事だったのです。

挑戦も変化も面白がれる場所

ライオンハートには「LET’S ENJOY! GIVE FIRST!」というカルチャーがあります。誰かが楽しませてくれるのも、誰かが動いてくれるのも待たない。自分から楽しみ、自分にできることを先にやる。それが、この会社の根っこにある姿勢です。

フィリピンを選んだことも、突き詰めれば、この姿勢と地続きでした。自分たちから現地に入り、人と関わり、一緒にチームをつくり上げてきました。こちらから動いたぶんだけ、返ってくるものもありました。

私たちが目指すのは、同じ形の人が並ぶ組織ではありません。日本とフィリピン、それぞれ違う強みを持った人間がかみ合って、一人では、そして一つの国だけでは届かないところまで行く。「なぜフィリピンなのか」。その答えは、安さだけでは説明がつきません。そういう組織をつくれる場所の一つだと思えたからです。

自分から動いて、挑戦も変化も面白がれる人と働きたい。これから仲間になる人とも、一緒に楽しんでいけたらと思っています。

[ 出典元 ]

  1. EF English Proficiency Index(EF EPI)2025年版。フィリピンはスコア569で世界28位、アジア地域ではマレーシアに次ぐ2位。出典:EF Education First「EF EPI」 https://www.ef.com/wwen/epi/regions/asia/philippines/ ↩︎
  2. 年齢中央値(2025年時点)はフィリピンが約27.2歳、日本が約49歳(世界平均は31.8歳)。出典:georank「Demographics」 https://georank.org/demographics/philippineshttps://georank.org/demographics/japan ↩︎
  3. フィリピンのIT・BPM産業(ソフトウェア開発・ITサービス・BPOを含む)の従事者数は、2024年時点で約182万人。産業規模は約380億ドルで、2025年には約400億ドルへ拡大したと報じられている。出典:業界団体IBPAPの発表報道(The Tribune 2025年1月16日/The Manila Times 2025年12月31日)。 https://tribune.net.ph/2025/01/16/phl-it-bpm-industry-rakes-38-b-in-2024 ↩︎