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2026.08.10

「採用が片手間」なのは、誰のせい?兼務担当者を孤独にしない設計の話

「採用が片手間」なのは、誰のせい?兼務担当者を孤独にしない設計の話

この記事でわかることを、先に3行で書きます。

  • 「採用が片手間になる」は、担当者個人の能力や熱意の問題である前に、会社が採用の「前提」を決める時間を誰にも渡していない、という設計の結果であること
  • 採用は事務作業ではなく、会社の未来の組織をつくる職務であり、中期経営計画から逆算して設計するべきものであること
  • 兼務担当者を孤独にしないために、経営者・人事責任者が今日からできる3つのこと

総務や経理と兼務しながら、求人票の更新を後回しにし、応募者からの返信に半日かかり、面接の日程調整をしている合間に本業の電話が鳴る。夕方になってようやく採用のことを考えようとした頃には、もう気力が残っていない——こういう光景は、決して珍しくありません。振り返りの会議で「今期も採用がうまくいかなかった」という話になったとき、原因は「担当者がもっと頑張ればよかった」で片づけられがちです。けれど、本当にそうでしょうか。

「片手間になっている」のは、担当者の力不足でしょうか

結論から言うと、多くの場合、片手間になるのは担当者の能力の問題ではありません。会社が採用の「前提」を、誰も言葉にしないまま実務だけを渡していることの結果です。

採用実務は、工程だけを並べても、求人媒体の選定、原稿の作成、応募者対応、面接の日程調整、内定者フォローと、想像以上に多い。しかも、それぞれの判断のたびに「うちはどんな人に来てほしいのか」という前提が定まっていなければ、担当者は毎回、自分の感覚だけを頼りに考えるしかありません。これは片手間というより、もっとも時間のかかるやり方——都度、ゼロから判断する状態——を担当者に強いているのに近いのです。

採用実務を一人で抱えることの重さは、実際に担当してみないと実感しにくいものです。まして、それが本業の合間の兼務であれば、専任として腰を据えて考える時間そのものが最初から存在しません。「経験が浅いから」「本気度が足りないから」ではなく、専念する時間を渡されていないから、判断が遅れ、後手に回る。私たちは、この違いを混同したくないと考えています。

これは、一部の会社だけに起きている特殊な現象ではありません。リクルートマネジメントソリューションズと日経BPの調査(新卒採用担当779名対象、2026年2月調査)では、新卒採用担当の約6割が「採用計画の達成に苦戦している」と回答し、約3分の2が「現在のやり方を変える必要がある」と感じています。変える必要があると分かっていながら変えられないのは、担当者の意欲が足りないからではなく、前年踏襲のスケジュールと媒体選定に追われ、そもそも「何のために採るのか」を問い直す時間そのものが、会社の中に確保されていないからではないでしょうか。

会社・組織では、採用を「事務」ではなく「幹をつくる仕事」として設計できているでしょうか

会社・組織では、採用を「事務」ではなく「幹をつくる仕事」として設計できているでしょうか

結論から言うと、採用が片手間になる根本の原因は、会社が採用を「欠員が出たときの補充作業」としてしか扱っていないことにあります。

私たちは、「採用の失敗は教育では取り返せない」と考えています。だからこそ採用計画は、目先の欠員ではなく、中期経営計画から逆算して設計するべきものです。3年後、5年後にどんな組織をつくりたいのか。そこにどんな役割が必要で、どんな持ち味を持つ人に、何を任せたいのか。この設計図がないまま「とりあえず人を探す」実務だけを兼務担当者に渡すことは、地図を持たせずに知らない土地への案内を頼むようなものです。

私たちが人事のご相談をお受けする中で、気づかされることがあります。会社が本当に必要としているのは、採用実務そのものの代行ではなく、その手前にある前提設計だということです。誰にどう来てほしいのか、何を任せたいのか、会社の未来から逆算して言葉にする作業——これが曖昧なまま実務だけを兼務担当者に渡すと、担当者は一つひとつの判断のたびに、立ち止まらざるを得なくなります。求人票の一行も、面接での質問ひとつも、前提が定まっていれば数分で決まることが、前提がなければ何時間も悩む種になってしまうのです。

これは、私たちがブランディングの仕事で日々使っている技術と、実は同じところに立っています。お客様から「良い人材が欲しい」と言われたとき、その言葉のまま求人を出すことはしません。「良い」とは具体的にどういう状態か、なぜその人が必要なのか、今の組織にどんな景色が足りていないのか——曖昧な言葉を、具体的な輪郭になるまで掘り下げて聞きます。曖昧なままの依頼を、曖昧なまま実行に移さない。まだ言葉になっていない可能性を、かたちにする。これは私たちの仕事の型そのものであり、採用の前提設計にも、そのまま当てはまります。

誰が動いても機能する「前提設計」とは、何を決めることか

結論から言うと、前提設計とは、会社の未来から逆算した「うちで活きる人」の輪郭を、誰もが使える言葉に翻訳しておくことです。

具体的には、大きく3つの要素で考えます。ひとつ目は、コンピテンシー——会社の未来から逆算して定義する、うちで活きて成果につながる行動や持ち味——を、抽象的なスローガンではなく、行動として言葉にしておくことです。「主体性のある人」ではなく、「指示を待つ前に、現在地と目的のギャップを自分なりに埋めようとする人」というところまで具体化します。ふたつ目は、その人物像に、会社が何を任せたいのかを重ねることです。役割の輪郭がなければ、面接での質問も、判断基準も、担当者ごとにばらついてしまいます。3つ目は、この前提を、兼務担当者一人の頭の中ではなく、経営者や人事責任者と共有された状態にしておくことです。前提を一人だけが知っている状態は、結局のところ、採用の意思決定を一人に背負わせているのと同じだからです。

この3つが整えば、担当者が兼務であっても、判断の速度は大きく変わります。都度考える採用から、決めてあることを運用する採用へ。片手間に見えていた仕事が、実は前提さえあれば片手間でも回せる仕事に変わっていきます。

私たちは、理念や方針は掲げるだけでは機能しないと考えています。壁に貼った標語や、年に一度の経営計画発表会で語られる言葉は、日々の採用の判断に使われて初めて意味を持ちます。前提設計も同じです。一度つくって終わりにするのではなく、面接の質問、求人票の一文、内定者への声かけといった日常の判断のたびに、その前提に立ち戻れる状態をつくっておくこと。これができて初めて、兼務担当者は「自分の感覚だけを頼りに、毎回ゼロから判断する」状態から抜け出せます。

今日からできる3つのアクション

今日からできる3つのアクション

  • 兼務担当者の時間から、まず「採用の目的を言葉にする」時間を確保する。 30分で構いません。実務を進める前に、経営者と担当者で「この採用で何を実現したいのか」を話す時間を、意図的にカレンダーに入れます。
  • 「うちで活きる人」を、コンピテンシーとして3つだけ書き出してみる。 完璧である必要はありません。書き出してみることで、社内で認識がずれている部分が見えてきます。
  • 採用の意思決定を、担当者一人に背負わせない仕組みをつくる。 求人票の内容、合否の判断基準、内定条件——これらを兼務担当者だけが決めるのではなく、経営者が定期的に一緒に確認する時間を、恒常的な予定として組み込みます。

まとめ:片手間なのは、担当者でしょうか、それとも会社の設計でしょうか

「今期も採用がうまくいかなかった」という振り返りをするとき、私たちはまず、こう問い直したいのです。片手間になっていたのは、担当者の働き方だったのか、それとも、会社が採用に前提を渡す時間を確保してこなかった設計だったのか。

採用は、会社の未来をつくる幹の仕事です。教育では取り返しがつかない領域だからこそ、担当者の頑張りに委ねる前に、経営者自身が前提設計に時間を割く必要があります。私たちライオンハートは、ブランディングの現場で培ってきた「曖昧な言葉を具体化する技術」を使い、採用の前提を、誰が動いても機能する言葉に翻訳するお手伝いをしています。自社の採用が、今どこまで前提を持てているのか、一度一緒に見てみたい——そう感じられたら、どうぞお気軽にお声がけください。

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