「お弁当屋さん」を超えたブランドへ——オーケーズデリカ10年間の企業変革
三重県桑名市を拠点に毎日1万食以上を届けるオーケーズデリカ株式会社様は、約10年前、事業が成長する一方で、「大学まで出してもらったのに、お弁当屋で働いていることを親に言えない」という若手の声に象徴される、インナーブランドの課題を抱えていました。
ライオンハートは、杉本社長の人柄から「おかんの愛情とお節介」を企業人格として定義。ロゴ・ユニフォーム・空間・採用・Webまで、従業員が誇りを感じる接点を一貫して設計しました。
約10年の伴走を経て、採用応募者数は3〜4倍に増加し、初の大卒採用も実現。売上は10億円未満から20億円規模へ成長し、現場の若手が自ら説明会に立つ「ブランドスピーカー」へと変化しています。
事例概要
お客様名
オーケーズデリカ株式会社 様
プロジェクト内容
企業全体のリブランディング、ビジョン・理念の再構築(インナーブランディング)、タグライン・コーポレートロゴ開発、キャラクター・ブランドマネジメント、コーポレートサイト構築、「おかん弁当」(産業給食)サイト構築、配送トラックのカーラッピング、クレド(行動指針カード)制作、新工場内のオフィス・食堂スペースの企画・デザイン(本棚・屋外サイン)、オリジナルユニフォーム(白衣・ジャンパー)デザイン、「ALL OK! プロジェクト」のブランド支援、会社パンフレット制作
用途
給食・弁当業界に根強く残る「古い」「労働環境が厳しい」といったイメージを払拭し、従業員が仕事に誇りを持てるインナーブランディングを確立すること。前代表から現代表への事業承継期に経営基盤を刷新し、調理師・栄養士・大学新卒者などの採用力を抜本的に高めること。
シチュエーション
トラック1台での弁当販売から始まり、40年以上の歴史を持つ企業。前代表は「日本の給食・弁当文化を世界へ広げる」というビジョンを掲げていたものの、その意義が現場まで十分に伝わらず、深刻な採用難と帰属意識の低下に直面していた。若手社員からは、「この会社で働いていることを親に胸を張って言えない」という切実な声も聞かれていた。
事例の流れ
STEP
01 課題
お客様の課題
「親に言えないお弁当屋さん」から、誇りを持って語れる会社へ
オーケーズデリカ株式会社様は、三重県桑名市を拠点に、地域の企業や学校、高齢者福祉施設へ、毎日1万食以上の給食・弁当を届ける老舗企業です。ライオンハートとの取り組みが始まった約10年前、同社は事業が成長する一方で、給食・弁当業界に根強く残る古い職場環境のイメージや、仕事の価値が社会に十分伝わっていないという課題を抱えていました。
当時、若手の調理師や栄養士からは、「大学まで出してもらったのに、お弁当屋で働いていることを親に胸を張って言えない」という切実な声も聞かれました。寒い冬の早朝3時半、まだ暗い工場へ出社し、黙々と弁当をつくる。社会を支える大切な仕事でありながら、その意義や誇りを実感しにくい状況が、現場の意欲や帰属意識にも影響していました。
また、前代表は「日本の豊かな食文化を世界へ広げたい」という大きなビジョンを掲げていましたが、日々の業務に追われる現場まで、その想いや意義が十分に浸透していませんでした。経営と現場の意識の隔たりは採用活動にも表れ、応募者が集まりにくく、大卒人材の採用実績もない状態が続いていました。
その後、前代表が志半ばで急逝し、妹である杉本香社長が代表を引き継ぎました。杉本社長が大切にしていたのは、「おかん」のように、一人ひとりを愛情深く包み、時にはお節介を焼きながら、人を活かす経営です。ライオンハートは、この人柄と経営姿勢こそが、同社独自の価値だと捉え、現場で働く人々が「自分たちの仕事は、誰かの身体と命を支える誇りある仕事だ」と胸を張れるインナーブランディングの構築に取り組みました。
02 LHメソッド戦略策定
現在地や課題を整理(現在地や課題を整理し、ビジョンの実現にコミット)
「おかんの愛情」を企業人格に据え、社員の心をつなぐブランド戦略
ライオンハートは、オーケーズデリカ様の本質的な課題を、対外的な集客や売上ではなく、調理師、栄養士、配送スタッフをはじめとする従業員が、自社や仕事に誇りを持ちにくい状態にあると定義しました。そこで、現場で働く皆様と丁寧に対話を重ね、早朝3時半に出社する寂しさ、仕事への憧れと現実のギャップ、日々感じている喜びや葛藤など、表面には現れにくい率直な声を拾い上げました。
そこから導き出したのが、表面的に美しく整えるだけではなく、創業からオーケーズデリカに、脈々と受け継がれてきた温かさと情熱を企業人格として表現する、「おかんの愛情とお節介」を軸としたブランディング戦略です。
- 【業界らしさと、洗練されたデザインの共存】コーポレートロゴには、昔ながらのお母さんが愛情を込めてつくった弁当を、風呂敷のように「キュッ」と包む姿を想起させる、温かみのあるシンボルマークを開発しました。給食・弁当事業ならではの親しみやすさを残しながら、従来の業界イメージにとらわれない、経年劣化しない洗練された表現を両立しています。
- 【杉本社長を「企業のおかん」として可視化】杉本社長自身を、オーケーズデリカを象徴する「おかん」というブランドキャラクターとして明確化しました。メディア出演や対外活動では、印象的なヘアスタイルとオリジナルエプロンを一貫して用いるなど、人物としての魅力が企業ブランドにつながる運用ルールを設計し、継続的な発信を支援しました。
- 【働く従業員を主役にしたブランドストーリー】給食や弁当を、単に空腹を満たす商品ではなく、「食べる人の元気をつくり、愛情あるお節介で社会を元気にするもの」と再定義しました。この共通価値を、クレド、Webサイト、オフィス空間、ユニフォームなど、従業員が日常的に触れるさまざまな接点へ展開し、理念が自然に浸透する仕組みを設計しました。
03 LHソリューション実装支援
課題を解決(LHソリューションで課題を解決)
早朝3時半の出社を照らす光から、誇りをまとえる白衣まで。五感に届くブランド体験を実装
ライオンハートは、従業員や求職者がオーケーズデリカ様に触れる一つひとつの接点を「感情が動く瞬間」と捉え、視覚表現だけにとどまらない、五感に届くブランド体験として実装しました。
- 【働く現場を温める「光と空間」の演出】早朝3時半に出社する調理師や配送スタッフの寂しさを和らげるため、新本社の屋外サインには、冷たい白色光ではなく、温もりを感じる光を採用しました。冬の配送を終えて戻ったスタッフが、ほっと「帰ってきた」と感じられるような、安心感のある景色をつくりました。
- 【誇りをまとえるオリジナルユニフォーム】栄養士や調理師の皆様が、日々の業務の中で専門職としての誇りを感じられるよう、背面にシンボルマークをあしらったオリジナル白衣を開発しました。さらに、全社員へロゴ入りのジャンパーを支給。ユニフォームを身に着けることが、帰属意識と「自分たちは食を支えるプロフェッショナルである」という自覚につながるよう設計しました。
- 【オフィスの中心に、ロゴをかたどった本棚を設置】新工場のオフィス・食堂の共有スペースには、弁当箱をモチーフにしたシンボルマークの形状を再現した、大型の木製本棚を設置しました。従業員が自然に集まり、会話が生まれる場所をつくることで、企業理念やブランドが日常の風景に溶け込む空間を実現しました。
- 【業界の固定観念を変えるWebサイトと配送トラック】コーポレートサイトを全面的に刷新し、「おかん」である杉本社長の人柄とストーリーが伝わる、温かみのあるブランドサイトを構築しました。また、街中を走る配送トラックには、ロゴを全面に押し出し、親しみやすいカーラッピングを展開。地域の人々に一目でオーケーズデリカだと認識してもらえる「走るブランドメディア」へと変えました。
- 【「ALL OK! プロジェクト」と会社パンフレットの展開】学校給食や介護食、M&Aなどの事業拡大に合わせ、「お節介を通じて、ALL OK!な共感社会を広げる」という次のブランドコンセプトを策定し、展開を支援しました。制作した会社パンフレットは、経営者が集まる勉強会でも高く評価され、杉本社長の表彰にもつながりました。
04 LHソリューション実行支援
ビジョン達成にコミットし続ける(状況変化に対応)
採用応募者数は3〜4倍へ。社員の誇りが、家業から企業への成長を後押し
約10年にわたる伴走型のリブランディングは、オーケーズデリカ様の組織の内側と、社会からの見え方の双方に、継続的な変化をもたらしています。
- 採用力の向上(応募者数3~4倍、大卒採用の定着):
かつて応募者が集まりにくかった会社説明会には、従来の約3~4倍となる30~40名規模の応募が集まるようになりました。また、それまで実績のなかった大学新卒者の採用も実現し、その後も継続的な採用につながっています。 - 従業員が自ら魅力を伝える「ブランドスピーカー」へ:
「親に仕事のことを言えなかった」と話していた若手の調理師や栄養士が、リブランディングを通じて仕事の価値を再認識。現在では、会社説明会の壇上に自ら立ち、求職者へ自社の魅力や仕事への想いを語る存在へと変化しました。 - メディア露出の増加と独自ブランドの確立:
テレビや新聞などからの取材・出演依頼が増加しました。杉本社長の親しみやすい「おかん」というキャラクターと、愛情あるお節介で社会を元気にする企業姿勢が広く知られ、従来の「お弁当屋さん」の枠を超えたブランドイメージが定着しています。 - 「家業」から「企業」への成長:
取引開始当時は10億円未満だった売上規模が、給食事業や介護食事業の拡大、M&Aを通じて、現在では20億円規模へ成長しました。個人の力に支えられた家業的な経営から、理念とブランドを共有する組織へと進化し、社会的な影響力も着実に高まっています。
【今後の伴走展望】オーケーズデリカ様は現在、先代が遺した「日本の弁当・給食文化をフランスや東南アジアをはじめとする世界へ広げる」という志を受け継ぎ、本格的な海外展開に向けて歩み始めています。ライオンハートは、日本ならではの「おかんの心」と、高い衛生管理・製造技術を世界へ届けるため、グローバルブランディング、新たなプロジェクトのデザイン統括、海外向けコミュニケーションツールの構築などを通じて、これからも同社の挑戦を伴走していきます。