WRITTEN BY
鵜飼 聡至
執行役員
2009年にライオンハートへ新卒入社。2016年にはフィリピン子会社の立ち上げを経験し、仕組み化による組織改革の醍醐味を知る。「現場」と「カイゼン」を軸に、同社の鋭い企画を最適な技術で具現化・高品質化させるグループの心臓部を担う。多様な才能が混ざり合い、常に探求し続ける強い組織づくりを目指す。
ライオンハートでは、プロジェクト管理・工数管理のツール「ProPhit」をAIエージェントで自社開発し、社内で使っています。
AIエージェントでの開発はこれ以外でも取り組み始めていて、コードが形になる速さには何度も驚かされました。ただ、取り組むほどはっきりしてきたのは、開発全体の速度と品質を決めているのは、その手前にあるものだということでした。
それを説明するために、ProPhitがどうして生まれたのかを振り返ります。
これまで、monday.comやBrabio!、Googleスプレッドシートなど様々なサービスを使ってプロジェクトを管理してきました。どれも優れたサービスで、実際に長く助けられてきました。
それでも、どうしても手が届かない部分が残りました。
たとえば、案件の進行状況と、そこにかかった工数、そして売上金額を同時に見たいときです。どこまで進んでいて、誰にどれだけ時間がかかり、いくらの売上になっているか。この三つを一つの場所で扱えるサービスが、なかなか見つかりませんでした。結果として、データを繋ぐための中間プログラムを別に作る必要がありました。
また、案件の数字をいつの時点で見るかは、目的によって変わります。受注が決まった時点で見たいときもあれば、納品した時点、入金した時点で見たいときもある。同じ案件でも、どの基準を取るかによって数字が並ぶ月は変わります。既存のサービスは売上をどこか一時点に置く前提で作られていることが多く、この見方の切り替えまでは面倒を見てくれませんでした。
ツール本体が優れていても、自社のルールや見たい数字に合わせようとするほど、その周辺に自作の継ぎ足しが増えていきました。
最初から「こういうツールが欲しい」と要件を書けたわけではありません。
書けるようになったのは、いくつものサービスを使ってきたからでした。使うたびに、何が足りないのか、本当は何をしたかったのかが具体になっていく。逆に、あると便利そうに見えて実際には使わなかった機能も分かってきました。
振り返ると、試行錯誤を続けていた期間そのものが、自社にとっての理想の状態を言葉にしていく作業だったのだと思います。
そうしているうちに、AIエージェントを使った開発の品質が、実務で使えるところまで上がってきました。それなら試してみようと考えて、ProPhitの開発を始めました。
開発では、手が届かなかった部分を初めから前提にしました。加えて、担当者ごとの集計や日報・月報もここで完結するようにし、入力した数字は、その場で集計に反映されます。こうして、自社の運営に必要なツールが出来上がりました。

やってみて分かったのは、AIによる開発も、ほかのAI利用と変わらず、そして人に仕事を頼むときとも変わらないということです。目的をどれだけ正確に伝えられるか、そして出てきたものをきちんとレビューできるか。ここが要になります。
少し専門的な話になりますが、こんなことがありました。
開発の初期、お客様の情報がプロジェクトのデータの中に一緒に入っている形になっていました。これでも動くには動きます。しかし私たちの仕事では、同じお客様から複数の案件をご依頼いただくことがあります。その形のままでは、同じ会社の情報が案件ごとに重複し、変更があったときの直し漏れにつながります。そこで、お客様の情報は単体で管理し、プロジェクトと紐づける形に変えました。
これは技術的に高度な判断ではありません。自社の商売がどう成り立っているかを知っていれば出てくる話です。AIは渡された目的の範囲で正確に作ってくれます。だからこそ、渡す目的の精度と、出てきたものを判断する側の理解が問われます。
そのうえで速さについて言えば、これまでとは比べ物にならないものでした。各種サービスで試行錯誤してきたから自社に必要な要件が分かっていて、これまでの開発経験があるからレビューができる。その土台の上にAIが加わったことで、考えていたものが一気に形になりました。
ライオンハートにはLHメソッドという課題整理の型があります。理想の状態と現在地をそれぞれ可視化し、その間にあるギャップを課題として定義する。「何を作るか」より先に「なぜ作るのか」を問う、という考え方です。
今回のProPhitの開発は、結果としてこの型をそのまま自社に使ったものでした。既存のサービスを使い続けた期間が現在地の可視化にあたり、そこで見えた手の届かない部分が課題でした。AIによって変わったのは、その課題に対する解決策の作り方だけです。
解決策を作るコストが下がるほど、課題をどう定義したかがそのまま結果になります。AIによって誰でもものを作れるようになりましたが、何を作るかを決めるのは、事業への理解と、その領域の専門性のほうでした。
今回は自社の課題に使いましたが、この順序はお客様の支援でも変わりません。つくる手段が速くなったこれからこそ、その手前にかける時間が結果を分けると考えています。