Title 中小企業の採用担当にオススメ:面接で人の”心の根っこ”を見ること

Date 2021.04.14
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三つ子の魂百まで

三つ子の魂百まで」っていう有名なことわざの話です。幼い頃に出来上がった性質は一生変わらないという意味のこちら、ライオンハートは採用にとってものすごく重要なポイントだと思っています。

かつて「採用するときは必ずその子の実家に訪ねていく!」と仰っていたお客様がいらっしゃいました。当時は「すごい勢いあるなぁ」「ファミリー感半端ないな」程度に受け取っていたのですが、今にして思えば、なるほど1,000%頷くことができます。たしか、その頃お聞きした理由としては、その子の実家に行けば、大体のことがわかるんだとのこと。曰く「ご両親が商人なのか、サラリーマンなのか、公務員なのかで、どんな歩みをしてきたか一概には言えないにしても、おおよそ予想がつく。そして、玄関を見ればその子がどんなふうに教育されてきたのかがなんとなく分かる」のだそうです。その企業様も「三つ子の魂百まで」を意識しておられたということでしょう。

 

人のルーツは社風や仕事と合致するかの基準になりうる

ちょっと心理学っぽいお話

これまでの採用による数々の出会いと別れを経て「人」について理解を深めてきました。中でももっとも大きなことのひとつは、人のルーツ、心の根っこをいかに見るかということです。色んな理由で、幼少期にクリアすべき課題を持ったまま大人になるまで歩んできてしまった人は、無意識に職場でその失敗を再現しようとします。例えば、幼少期に母親からの愛情が足らないと感じたまま大人になって、その過程でも課題を乗り越えられなかった人は、会社の女性上司を母親に見立てます。愛情を独り占めすべく甘えたり、反発したり。よくあるケースでは、他の同僚の活躍が続くと、自分は失敗を重ねることで注目を集めようとすることさえあります。本人は意識的にやっているわけではなく、潜在的にそうした行動をとるのだと思っています。反対に、父親からの愛情が足らないと潜在的に感じて育ったタイプの人は、無意識に男性社員に甘えた振る舞いで接します。一方、女性社員(母親的な存在)に対しては対等に振る舞うことができてしまうので、女性社員同士では微妙な気持ちになることも。また、幼少期から今に至るまで親御さんを強烈に憎んだり恨んだりしている場合は、物事を受け取るときに自分なりの解釈が介在し、素直さが極端に欠如している傾向があります。

根っこを見る=相性を見るということ

大前提として、どんな歩みをしている人にも、その人の人生があり、尊重されるべきです。ただし、その人の人生によって創り出された行動特性が、必ずしも自社や自社の業務に合致するとは限りません。相性がよければお互い幸せになりますので何もいうことはありませんが、合致しなかった場合は悲惨です。その人が意図せずにとった行動の多くが、問題行動となってしまいやすいからです。だからこそ書類選考や面接では、その人がどんな歩みをしてきたか、どんな人や事柄に影響を受け、どんな価値観を形成して今に至るのかをつぶさに観察しています。なんたって「採用の失敗は教育では取り返せない」の最たるものが、こうした心の根っこに起因するのですから。

 

ライオンハート的ルーツの見極め方

選考ステップなんていう短い関わりの中で、いかにして応募者さんのルーツに触れ、心の根っこを探っているのか。実は、書類選考から始まって内定(あるいは不採用決定)に至る全ての過程で見ています。

書類選考:互いに見えないコミュニケーションだと考える

当たり前ですが、自分の第0印象を与える書類をどんな風に書いてくるかに注目しています。手書きか、デジタルか。デジタルの場合はどんな作り方かなど、割と些細なことにもその人を表すヒントがあります。また、どんな学校を卒業したのか、どんな職場でどのくらい仕事をしていたのか。そもそも、それらはどうしてなのか。学校で勉強していたことと違う職業を選択している場合なんかは、分かりやすく興味が湧くことのひとつです。

面接:リアルなその人を新鮮な眼差しで観察する機会

立ち振る舞いや受け答えから見える人となり

はじめて画面またはリアルで対面する機会ですから、さらにその人を知るヒントが立体的になります。どんな服装で、どんな声色で、どんな話し方で、どんな表情なのか。目線のやり方やジェスチャー、立ち振る舞いにもその人の性格が滲み出ます。たとえそれが普段のその人とは違っていても、緊張する場面でどんな風に振る舞うのかを窺い知ることができます。書類選考で湧いてきた興味関心については基本的に全て伺います。それに対してどんな受け答えをしてくれるのかにも、その人らしさが隠れています。どんな語尾で、どんな語順で話すのか。その時、どんな顔をしているのか。たとえば、思いつきで場当たり的に話す人は、よく上をみたり目線をそらしながら話しますし、「えーっと」「あのー」など”フィラー”と呼ばれる語句を多発したりもします。考えながら喋っている証拠ですね。
また、早口で捲し立てるように話す人は、緊張していたり、失敗を恐れていたりする可能性があります。そうしたことも業務の中でしっかり現れるであろうその人の特徴なので、観察しています。

パーソナルな部分にどんどん突っ込み見つけ出す「三つ子の魂」的心の根っこ

強制はしませんが、極力ご家族について話してもらっています。どんな性格で、どんな仕事をされているのか、ご兄弟・姉妹はいるかなどです。どんな過程環境に育ったかは、良し悪しではなく、その人の人格を形成する重要な要素だからです。本人さえ構わなければ、恋愛遍歴についても聞いていきます。モテていたかそうでなかったかも人の性格の分岐の要素になり得ますが、さらにその事実をどう受け止めて今に至るかによっても、その人の性格は異なるでしょう。
冒頭の「三つ子の魂百まで」の話に戻りますと、その人の「三つ子の魂」について推察するために必ず聞くようにしていることがあります。それは、小さい頃によく言われた言葉についてです。できれば、ご両親それぞれから言われたネガティブ・ポジティブ両方のことを思い出していただきます。親は私たち人間にとって一番最初に接する大人で、一番最初に愛情の存在を教えてくれる人、もっとも影響を受ける人です。その人に頻繁に言われてきたことは、本人にとって強烈に心に残っているはずです。
たとえば、私の場合ですと、父は口の重いタイプで具体的な言葉の記憶はありませんが「お前は俺の娘だ(=大事な存在だ)」とよく言ってくれていました。母も「私の子だから可愛いに決まってる」とよく言ってくれていました。親戚一同から可愛がられて育った記憶があるためか、自己肯定感は非常に高いですし、人を疑うことを知りません。ネガティブな側面だと「勝手にしなさい」「好きにしなさい」「自分でなんとかしなさい」と言われてきたからか、人を頼ったり甘えることがとても苦手で、顔色をよく伺うところがある…といった具合です。
もうひとつ例を挙げましょう。ある社員さんのケースです。人当たりがとてもよく、怒り狂っても仕方がない場面でもしっかりアンガーマネジメントをして冷静に対応する品のいい人なのですが、優しい物腰とは裏腹に仕事には大変厳しく、相手が新人だろうがベテランだろうがピシャリと指摘します。そこで、彼女にも幼少期によく言われたことやエピソードを思い出してもらうと、彼女もまたみんなから可愛がられて育ったのだそうです。親戚一同の前で習っていたピアノを披露した時、みんなが「可愛いね」「上手だね」「お利口だね」と褒め称える中、ただひとり「それでも練習したの?」と厳しい一言を放った方がいらしたそうです。一見なんでもないエピソードですが、ニコニコしながらビシッと現実的な一言を放つという今の彼女を創り出したのはこの親戚の人だったんだ!と、採用チーム一同で大変盛り上がりました。

1+1=2のように、簡単な公式があるわけではありませんが、面接という場を「その人そのものを知る」ことにフォーカスした時、かなり深い情報を得られるのは間違いないと思っています。また、こうした事例を集めていくと、人の行動と性格の傾向やパターンが見えてきます。ですから、私たちは面接で会う機会を持たせていただいたすべての方との時間を大事に過ごしています。

補助としてのSPIや実技

私たちがこの目で見、耳で聞き、肌感覚で感じてきたことが実際にどのくらい真実なのか。客観視するためにSPIや実技試験を設定しています。SPIと面接担当者の見解は今のところ割と乖離がなく、自分たちの眼もまんざらではないという結果になっています。あの手この手でその人について情報収集し、実際に現場でどのように育っていってもらえそうか、メンバーと馴染めそうか、職種に合った資質を持っているかを見極めるわけですが、最後の最後まで決め手にかける場合もあります。面接も書類も実技も申し分なかったからきっといいのだろうけど、SPIで嘘をついてる可能性がある、と診断されたケースなどがそれです。最後に起きたこのケースでは、ここまで私たちが見てきて「良いのでは?」と思っているなら、信じて前に進んでみよう!これでダメでも、見抜きようがないのだし仕方がないと割り切ろう、と決断しました。

 

 

なぜ見極められるようになったのか

役員3名とも共通の恩師の元で経営を学び、その学びの中で「内観」をやってきたことが大きく影響しています。内観とは、ざっくりいうと、自分の人生を全部棚卸しして客観的に眺め、己の心の癖を知るという作業です。人によっては振り返りたくない過去をほじくり返すようなこともあるので、大変エネルギーを使います。どんな自分も全部自分自身で認め、自分の資質と癖・それらの乗りこなし方を見つけるのです。
こうして自分自身を使って「人」の内面に深く潜り込む眼差しを得ると、人そのものへの見方が変わります。今、この瞬間の自分を創り出しているのは自分以外の何者でもないと気づくからです。つまり、自分以外の仲間・お客様・取引先・友人・親…すべての人の今にも、同じようにルーツがあると気づきます。いわば「その人はどこからきたのか=その人のその性格はどのようにして作られたのか」を考えるようになるということです。

目の前の人が起こしている行動、とっている態度、選んでいる言葉にはすべて理由があります。その理由にもさらなる理由があります。内観するのは簡単なことではありませんし、特殊な機会でもない限り難しいでしょう。まずは、子どもみたいに「なんで?なんで?」と掘っていくことからスタートすると、根っこに辿り着けるようになるのではないかと思います。ぜひ、面接を実験場と見立ててチャレンジしてみては!

#採用 #人事 #組織づくり